2026年9月
忘れがたい瞬間か、大いなる幻想か
4月に本学に着任して4ヶ月。忘れがたい瞬間に遭遇したのでお伝えしたい。本学では例年8月初めに、高校生や保護者に大学を開放するオープンキャンパスを実施する。地域政策学部では、学部長による学部紹介、教員3名による模擬講義があり、最後に質疑応答がある。今年度は初の新入生を迎えたことから、質疑応答を大学生に担当してもらうこととなり、私がその分掌となった。
新入生74名に参加を呼びかけたところ、アルバイト代が出ることもあってか、19名の応募があった。そのうち6名の学生と私で企画チームを作り、グループトークと名付けた学生主体型質疑応答の企画案を作成した。その内容は、説明会最後の25分間を使って、高校生10人程度の班に学生1人が入って少人数で対話を行うこととなり、「大学生と話せてよかった」と来場者に思ってもらうこと、および参加大学生のコミュニケーション能力を向上させることの2点を目標に定めた。オープンキャンパス2日前の会場設営後に14名が集まり、企画案を共有した。当日朝の直前ミーティングには19名の学生全員が集まり、まず教室の机2列単位ごとの分担場所を確認した。その上で、企画チームメンバーによる模擬グループトークの実演を含め、進め方シミュレーションなどを行った。
説明会は午前と午後に分かれ、同じ内容を2回繰り返した。来場の高校生は2回とも募集上限の150名に達し、教室はほぼ満杯となった。説明会では、分担した机に座った高校生との班づくりに先立って、積極的に話しかけることで歓迎ムードを作るように学生たちに促した。グループトーク本番では、大学生各自が工夫した自己紹介アイスブレークに続き、高校生から出た質問に答えたり、質問がない場合は大学生から話題を振るなどした。活発な高校生がいた班では対話が順調に進んだが、中には沈黙の時間を過ごした班もあったようだ。午前の部が終了後、振り返りを行い、答えに窮した質問に対する対応などの情報共有を行い、昼食休憩となった。
「忘れがたい瞬間」が起きたのは、午後の部の入場前であった。会場ドア前で待機していた大学生たちがいよいよ入場というとき、1人の女子学生が「みんなで手を重ね合わせよう」と声を上げた。そして私に向かって「声だしは先生だよ」と言う。この企画で初めて会ったばかりの学生だったので少し意外だったが、その場にいた10人ほどの学生が次々と手を重ね合うように差し出した。私も手を重ね合わせて、「行くぞ!」と言うと、即座に皆から「おー!」という声が返ってきた。ほんの数秒間の出来事であったが、学生たちが自然発生的に気合いを入れ合うというのは、まさしく主体性・協働性の発露であったと思う。ただし学生目線からすれば単なるノリであり、私の大いなる幻想だった可能性も否定しきれない。気になったので、後日、その場に居合わせた若手事務職員に尋ねたところ、「何かいいなーと思った」とのコメントだった。だとすると、私の思いもあながち幻想ではなさそうだ。何れにしても、教員目線からすると意図せざる形で貴重な瞬間をもたらしてくれた学生たちを誇らしく思う。
教育の場でも、職場でも、構成員の主体性を涵養するのは決して容易ではない。実現困難な目標と言ってもよいかもしれない。私の次の仕事は、どういった条件下で構成員の主体性・協働性が発露されるのかを一般化し、それを大学教育、ひいては地域づくりに活かすという難題に挑むことだ。

「産業技術先進地調査」について
地域経済研究所長 松原 宏
ふくい産業支援センターの行事の一つに、県内企業から参加者を募って行う「産業技術先進地調査」がある。これに昨年度から当研究所が共催する形で、北陸新幹線沿線の産業集積地を訪問する機会としている。昨年度の新潟県上越市に続いて、今年度は9月8日に長野県上田市を訪問した。
当日は、県内企業6社11名、ふくい産業支援センター5名、当研究所2名、合計18名が北陸新幹線の上田駅に集合、その後貸切バスでの移動中の車内で、松原が上田・坂城地区の産業集積の特徴について説明を行った(資料1)。
午前中は、上田市下丸子の長野オートメーション株式会社、午後は上丸子のシナノケンシ株式会社を訪問したが、前者は従業員190名のうち設計者が約4割を占め、工場の自動化装置を全国の多様な顧客から受注する企業、後者は1918年創業の絹糸紡績業をルーツに、1962年に精密モーター企業に転換し、現在は国内生産が大幅に縮小する一方で、新規に宇宙事業を開拓する企業で、両者の工場の生産ラインの対照性が印象的であった。その後、信州大学繊維学部内にある浅間リサーチエクステンションセンターで、岡田基幸センター長より産学官連携についてお話をうかがった。270回以上となる「リレー講演会」など、長年にわたる取組みに学ぶところが多くあった。

第4回地域経済研究フォーラム「コンテンツツーリズムと地域文化の未来」
AIを活用した地形改変に関するグローバル地域研究セミナーが開催されました

9月7日(月)、地域経済研究所企業交流室にて、「AIを活用した地形改編の予測と防災—日本とブラジルの比較一」をテーマに、第5回グローバル地域経済セミナーが開催されました。地域経済研究所の松原宏所長からの挨拶の後、サンパウロ州立大学(UNESP)プレジデンテ・プルデンテ校地理学科のジョアン・オズワルド・ロドリゲス ・ヌネス(João Osvaldo Rodrigues Nunes)教授(福井県立大学地域経済研究所 招聘外国人研究員)から「ブラジルにおける経済発展に伴う地形の人工改編とAIを活用した防災の可能性」のご講演がありました。ブラジルの人工地形改変後の浸食被害について、AIを用いて予測する研究が報告されました。さらに、福井市周辺の足羽川や荒川などの現地調査を踏まえ、地形や河川水位などのデータをもとにAIを使って浸水の可能性がある地域を推計する研究成果も報告されました。

次に、大正大学情報科学部グリーンデジタル情報学科の中埜貴元教授から「日本における地形と災害リスクを巡る現状と課題」のご講演がありました。国土地理院で20年以上にわたって地形と防災をご研究してきた知見をもとに、防災地形と災害の関係についての解説いただきました。そして、災害予測や防災へのAIの可能性について、画像データから土砂崩壊箇所を抽出した研究成果などもご報告されました。

その後は、本学地域政策学部の三橋浩志教授のコーディネイトのもと、お二人の講演者とともに、質疑応答が行われました。8月28日未明の嶺北豪雨災害の直後の開催ということもあり、参加者の方の関心も高く、本学地域政策学部のアンドレア・漆間教授の通訳のもと、「AIはどの程度の精度まで予測可能なのか」、「温暖化などで激甚化する災害にどの様に対応すべきか」など、活発な質疑応答が行われました。


自治体の防災関係者が嶺北豪雨災害の対応で欠席せざるを得ないなか、25名の方にご参加いただき、地形と防災について国際的な比較を踏まえたセミナーとなりました。








