福井県立大学地域経済研究所

2022年1月

  • -持ち直しに入る日本経済、課題山積の中で新たな経営モデルの構築を-

     2021年の日本経済を概観すると、年初来、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が断続的に発令される中、国内景気は一進一退の状況を余儀なくされた。
     ちなみに、昨年1~3月期は、堅調な輸出に支えられ生産活動が回復基調を持続する一方、需要面では緊急事態宣言の再発令による外出自粛や飲食店などでの時短営業から個人消費が精彩を欠いた。4月に入ると、3度目の緊急事態宣言が発令され足下の消費活動が再び弱含んだものの、輸出が堅調な汎用機械や生産用機械、電子部品・デバイスなどの増産により、生産活動が回復基調を持続。その結果、4~6月期のGDP成長率は2四半期ぶりのプラス成長となった。しかし、7月入り後は、感染拡大を受けた緊急事態宣言の4度目の発令により、各種の物販をはじめ宿泊・飲食サービスなど個人消費の抑制傾向が続いたほか、設備投資も前年割れで推移した。
     供給面でも、半導体不足や東南アジアからの部品調達の停滞による自動車の減産などから、低調な創業が続いた。そのため、2021年7~9月期のGDP成長率(改定値)は、物価変動の影響を除いた実質で前期比▲0.9%、年率換算で▲3.6%と、2四半期ぶりのマイナス成長に陥っている。
     ただ、秋口以降は、ワクチン接種の進捗と新規感染者の低下傾向、それによる9月の緊急事態宣言解除を受け、停滞した宿泊・飲食サービス関連需要を含め、国内での経済活動の再開が進んだ。
     こうした中、2022年の経済情勢について概観すると、今は何と言ってもオミクロン株の感染拡大が懸念されるところではあるが、まず需要部門では、うまく新型コロナウイルス感染の鎮静化が進めば、経済活動が正常化し雇用・所得環境の改善が進むことに加え、防疫への対応と経済活動の両立が進み、さらに、これまでの政策支援や消費抑制傾向により過剰に積みあがった家計貯蓄の一部が消費に回ることで、個人消費の回復に繋がるとの考え方が有力である。ただ、原油高などを背景とする仕入価格の上昇により、運輸・郵便や宿泊・飲食サービスなどのもう一段の業況悪化も懸念され、業種・業態間による収益環境のバラツキも顕在化するであろう。
     一方、供給部門では、半導体の供給制約という課題が本年も負の影響を与えるものの、世界的な景気回復を背景に資本財や電子部品・デバイスへの需要が堅調であることや、部品不足の要因となった東南アジアの新型コロナウイルス禍が和らぎ、今後、自動車などの生産が持ち直していくとの見方が支配的である。従って、本年の日本経済は、各種の不確実性を伴いながらも、徐々に持ち直しの状況へと進むであろう。
     また、前述したオミクロン株の需要への影響についても、景気腰折れといった最悪のシナリオを想定しておく必要はあるが、これまで経験した国民のコロナ対応能力に加えて、オミクロン株自体に、懸念されるほどの脅威がなければ、思うほどの厳しい状況は回避できるものと考えられる。
     いずれにせよ、産業・企業を取り巻く環境は、今、コロナ禍は無論、DX化、サスティナビリティ、SDGs、CSR、カーボンニュートラル等、多様な課題に対応することが必要とされている。いつまでもこの現状に手をこまねいているわけにはいかない。課題山積の中ではあるが、そろそろ新たな経営モデルの構築を図らなければならない。
     それには、具体的にどのような事業戦略を検討すべきなのであろう。例えば、現在保有する市場を深堀する、今の技術やノウハウで新たな市場を開拓する、或いは今の市場をベースに新たな技術やノウハウを投入する、そして、多角化戦略など様々な考え方があるに違いない。もちろん、考えた戦略を成功に導くためには、自社を取り巻く外部環境から自社にとっての機会と脅威を整理し,さらに自社の独自能力から強み,弱みを分析するなどして自社が取るべき今後の戦略を明確にしていくことが必要となろう。一刻も早く、攻めの経営へと転じてもらいたいものだ。

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