2025年3月
産業立地政策はどこへ行く?
先日、東北経済産業局の半導体アドバイザリーボードの研究会で、「東北における産業立地政策の変遷と今後の政策課題について」と題した報告を行った。私と東北局との関係は、2007年に遡る。日本の産業立地政策の歴史でいえば、1997年からの「地域産業集積活性化法」に代わり「企業立地促進法」が施行された年に当たる。東北産業活性化センターの報告書で、2008年に10項目の方向性をまとめたが、第1番目に「新たな自動車産業集積地域を形成する」とした。
2000年代からのデジタル家電ブームと好調な自動車輸出に支えられて、毎年のように企業の立地件数が伸びていき、全国の工場立地件数で「第3の山」が形成された時期だった。こうした時期に「企業立地促進法」が策定されたが、2008年のリーマンショックにより、工場の閉鎖が問題になり、2009年の東北局での研究会では、企業の地域定着策についての議論が中心になった。私自身この頃、立地調整論を打ち出し、生産機能に特化した工場は閉鎖されやすいとして、マザー工場化といった工場の機能変化に着目していた。
2011年に東日本大震災が発生し、被災状況や回復過程に業種や地域による差が顕著だった点を論文で指摘するとともに、東北復興のお手伝いは今も続いている。全国的にも企業立地の低迷が続き、2017年には「企業立地促進法」に代わって、「地域未来投資促進法」が施行されることになる。そこでは、地域の中核企業による地域経済牽引事業への支援が中心に据えられたが、2019年度に東北局の調査研究に関わり、仙台北部から岩手県北上市にかけての地域に、コア技術を活かした「工場の進化」事例がみられる点に注目した。
ところで、全国的には最近、半導体産業を中心に大型投資が相次ぎ、話題になっている。東北局の研究会で、昨年12月にキオクシア北上工場の第2製造棟を見学したが、総投資額1兆円といわれる巨大設備に大変驚いた。経済産業省の「経済産業政策新機軸部会」では、国内投資案件を日本地図に示しているが、熊本県でのJASM(台湾のTSMCとソニー、デンソーなど)、三重県と岩手県のキオクシア、広島県のマイクロン、北海道のラピダスなど、半導体工場の大型投資が目を引く。また、経済産業省のウェブサイトには、「経済安保推進法に基づく半導体・先端電子部品サプライチェーンの強靱化」の名の下で、採択案件リストが公表されている。このように、国際的にも国内的にも政治に左右された立地が目立つ一方で、工場立地件数は横ばいをたどっている。「第4の山」がみえてこない中で、2017年からそろそろ10年が経とうとしている今、日本の産業立地政策の今後が気になり出している。
■中島精也先生による時事経済情報No.115
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