2015年2月
韓国企業に対する見方
日本と韓国の政治関係は悪化した状態が続いている。内閣府の「外交に関する世論調査」によると、韓国に対して「親しみを感じる」とする回答割合は平成23年の62.2%から24年は39.2%に低下、25年は40.7%と横ばいだったが26年は31.5%とさらに下がった。これに対し「親しみを感じない」は23年の35.3%から24年に59.0%に増え、25年は58.0%で26年には66.4%と上昇した。親近感の低下がうかがえる。
韓国企業についても、4から5年前は、大手企業が世界で売上を伸ばす状況を伝えるとともに、「韓国企業に学べ」と、成功の理由を分析する報道や書籍が多くみられた。しかし最近の報道や書籍には「サムスン電子はスマートフォンの不振で売上や利益が落ち込んでいる」「ウォン高が進み韓国企業の収益は悪化している」といった状況や、韓国経済や企業の弱みに注目した内容が増え、韓国企業への評価も下がっているように見受けられる。
ただ、日韓両国間の貿易規模は低調になっているわけではない。輸出と輸入の合計である貿易総額をみると、平成23年は8兆4,392億円、24年は8兆1,450億円と前年比3.5%減少したが、25年は9兆49億円と10.6%増加。26年は8兆9,929億円で0.1%の減少、これは前年とほぼ同水準といってもいいだろう。
また、韓国は、日本の貿易先としては、中国、米国に次ぐ3位である。過日発表された平成26年の日本の貿易総額の速報値では、日本の貿易総額は158兆9,917億円となった。相手先をみると、1位は32兆5,550億円の中国、2位は21兆1,899億円の米国、そして3位は8兆9,929億円の韓国であった。この3位という順位は、2001年以降続いている。韓国と日本との貿易額が多いのは、両国企業が密接な関係を構築しているためだ。韓国企業は、部品、素材、機械は、日本企業から主要なものを輸入し、それを用いた製品を世界市場に販売している。韓国内のメーカーも育ってきているが、高度な技術を伴う品目は国産化が進まず輸入をせざるをえない。韓国の世界シェアが高い製品を例にとると、メモリー半導体はサムスン電子とSKハイニックスが生産し、両者を合わせた世界市場でのシェアはDRAMでは55%、NAND型フラッシュメモリーでは47%に達する。しかし、半導体の製造装置や、製造に使用する素材の国産化率は低く、多くを日本から輸入している。リチウムイオン電池でも、サムスンSDIとLG化学の世界シェア合計は40%を占めるが、素材の国産化率は低く、日本からの輸入が不可欠である(シェアは日本経済新聞「2013年の世界の主要商品・サービスシェア調査」より)。このように部品・素材・機械の日本から韓国への輸出が構造化されており、貿易収支は日本の黒字・韓国の赤字基調が続いている。
韓国に対する日本の見方は、この4から5年で大きく変わったようにみえる。しかし、高度技術が活用された部品、素材、機械に対する韓国企業のニーズや、それに対する日本企業への期待はそれほど変化しているわけではない。この点を考え、改めて韓国に目を向けてみるのも有意義なのではないだろうか。
北陸新幹線金沢開業!福井にとっての43のポイント
3月14日に北陸新幹線金沢開業を控えるなか、この大動脈を福井の活性化へと結びつけるにあたってのポイントを整理しておく。なお、本コラムの内容は、筆者による「地域経済研究フォーラム『新幹線とまちづくりー金沢開業1ヶ月前に、今一度、ポイントを押さえておくー』、2月12日」での講演資料を加筆・修正したものであることをお断りしておきたい。
01 東京~金沢が2時28分~50分、24便・約22,400席/日。早く太い動脈で直結
02 首都圏における「北陸」への注目度はかつてないレベル。福井も健闘
03 観光魅力、ブランド力、交通利便性を手に入れた金沢が北陸ブームの中心に
04 福井~金沢は43~50分。福井にとって北陸新幹線経由東京行きの便益は僅か
05 福井~東京の鉄路が、ほぼ同等の2ルートから選択可能に
06 北陸新幹線を活用して、これまでとは違った人の流れが各地で出現
07 福井~長野が最速2時間強。互いに新しい交流先が誕生
08 福井~大宮が最速3時間強。北関東、東北方面との最適ルートに
09 金沢~富山はシャトル新幹線(つるぎ)を含め3種類の新幹線で、18~23分で強固に結節
10 西からの在来線特急列車は金沢止まりとなり、金沢駅のターミナル化が進展
11 金沢に降り立った客は、観光地や温泉を求めて東西南北へと周遊
12 金沢から能登、富山へと、東に向かう客の福井への取り込みは困難
13 世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は、首都圏からみて魅力的なコンテンツ
14 金沢から西を向いた客は、加賀地方を経て福井まで足を運ぶ可能性
15 首都圏からは「金沢の先に福井があり、福井の手前に金沢がある」という感覚に
16 新潟県西部、長野県は、虎視眈々と関西をターゲットに
17 福井の観光地の最大顧客は引き続き関西、次いで中部であることを忘れてはいけない
18 金沢開業1年後に北海道新幹線新函館北斗駅開業。北陸ブームを1年で終わらせてはいけない
19 首都圏という新規客にとって、福井の全てが低認知・未体験。逆に高興味のチャンス
20 東尋坊、永平寺は圧倒的知名度。福井初上陸の地としての地位は揺るがず
21 北陸新幹線と東海道新幹線を活用した大周遊ルートにも注目
22 福井は、京都と金沢の間のミッシングリンクに位置するということも強みに
23 北陸新幹線によって外国人観光客の流れが変わる可能性。福井もこれを見据える必要
24 福井における観光消費額を増やすためにも、あわら温泉にもっと仕掛けが必要
25 伝統産業集積地という観光面でこれまで低利用の磁力が、首都圏民を惹きつける可能性
26 地域の宝を丁寧に探し協働のまちづくりを進めること等で、住んでよし訪れてよしの地に
27 おもてなしを形にすること、言葉にすること、心を込めることの重要性
28 金沢に嫉妬、羨望したり無関心を決め込むのではなく、あざとくその恩恵を取りにいくべき
29 金沢や加賀とタッグを組めるところ、差別化するところ、おこぼれを狙うところの見極めも大事
30 金沢でのコンベンションの宿泊需要のオーバーフローも狙い目
31 福井国体(2018年度)から県内延伸までは福井を全国に売り出すまたとないチャンス
32 小松~羽田便は「便数維持・機材小型化・低価格化」で対抗。安さが新たな魅力に
33 新旧高速交通体系の利用促進策と地域活性化をからめた政策誘導という視点も重要
34 福井延伸を見据えつつ、二次交通の充実等、総合的な交通体系を各地で見直すべき
35 ハード整備の重要性は変わらないが、そこに住民の魂を込めることにもっと注力すべき
36 地域を支え地域に愛される並行在来線という共通認識が、県民の中で広がっていくことが不可欠
37 開業前倒しにより、受け入れ態勢のスピードアップがますます必要
38 敦賀開業にフリーゲージトレインが間に合わない場合に向けた準備も必要
39 福井駅先行開業については、その投資効果を見極めた上で最適解を
40 特急停車駅のなくなる鯖江市では、まちのへそと軸を描きなおす必要
41 越前市では、武生駅と新幹線新駅となる(仮)南越駅のまちづくり上の位置づけが重要
42 リニア中央新幹線品川~名古屋間開通(2027年)を見据え、名古屋との結びつきを再評価する必要
43 東海道に直結してこその北陸新幹線であるが、敦賀以西は長期的に進めざるを得ない