2016年8月
今、求められる元気企業の条件とは
21世紀に入って地域を取り巻く経済・社会環境が大きく変化している。自動車産業での変革、化石エネルギーから再生可能ネルギーへの注目、生産の集中から国際分散化への動き、環境技術や循環型社会への注目、農業のビジネス化、さらに未来産業として拡大が見込まれるIOT(Internet of Things・モノのインターネット)等、様々な分野で大きな転換期(=「創造的破壊」が進展している時代)を迎えている。そして、このような大転換は地方の産業界或いは地域企業にとって大きなチャンスと捉えるべきであろう。
こうした中で、地元企業の動向を眺めてみると、外部環境への対応戦略や日々の経営革新面で第2次産業、特に製造業を中心に全国的に評価が高い企業も少なくない。しかし、こうした元気企業には限りがあり、実態は業績の二極分化が進み企業間格差がますます開きつつあることも事実である。従って、地方圏における中小企業の今後のあるべき姿を考慮すると、それは地域経済の基盤を支える中小企業、とりわけ今ある元気企業の次を担う企業、次に続く企業の成長が、地域の将来的な発展を促す重要な要素となることは言うまでもない。特に、地域経済が縮小する中で、建設業、小売・サービス業、介護・福祉など内需型企業の活性化は、地域間競争を勝ち抜くための需要な課題といえよう。
以上の点に着目しながら、今後、地域に求められる中小企業のあるべき姿とは何か、時代を生き抜く”強靭な企業”へと変身するための条件とは何かをテーマにそのヒントを既存の元気企業から探ってみると、それら元気企業は幾つかの共通した特徴を保有している事実に気づく。参考までに、元気企業に共通する特徴を幾つか挙げると、第1に、元気企業は常に有効性と効率性を追求し続けている企業であること。有効性とは「今求められる社会的ニーズの高い財・サービスをつくり続ける」こと、効率性とは「財・サービスの供給に際し、高収益を確保できるシステムを構築すること」である。そして企業が、有効性を上げるには企業と社会との関わりを変える必要があり、効率性を上げるには企業の内部構造、仕事の進め方を変えることが求められる。いずれにせよ、有効性と効率性の見直しにより、自社にとっての競争優位の源泉を一日も速く確立すべき時であろう。第2の特徴は、「2つのC」を実践する企業であること。「2つのC」とは、すなわちトップ自らがチェンジ(change)し、チャレンジ(challenge)精神を醸成し続ける企業であることを意味し、複雑化・多様化する時代だからこそ、経営トップに求められる必要不可欠な素養と言うことになる。第3の特徴は、「トップと社員が一つとなり総力経営」を実践する企業。世界的な企業間競争が激化する中トップやほんの一握りの頑張りだけでは困難な時代、社員一人一人が目標に向かって燃え、トップと従業員の立場を乗り越えた関係構築の重要性、言い換えれば、それは家族主義という過去の日本型経営の一部を取り入れた経営スタイルを今一度考慮することなのかも知れない。そのほか、「さらなるオリジナリティー追求型企業」、「CS(顧客満足=Customer Satisfaction)とES(従業員満足=Employee Satisfaction)の両方を追求する企業)」、6次産業化のように「ネットワーク(多機能・複合型産業化)の構築を目指す企業」、「グローバル戦略追求型企業」など。
このように、元気企業からは多くの共通した特徴を見出せるが、よくよく考えるとこれら手法は、これまでも経営基盤強化の基本的やり方として実践されてきた手法であることも否めない。しかし、低成長時代、閉塞感が漂う時代だからこそ、今一度、企業経営の原点に立ちかえり、自社が保有する経営資源の基礎的条件を再構築することが必要ではなかろうか。その結果、見直された自社の新たな経営スタイルが将来の可能性につながり、自社の発展を促す原動力として大いに機能していくものと思われる。
もはや景気変動に一喜一憂する時代は終わった。今まさに地域企業が大いに活躍できる時が来た。そのために、各々の企業は、まず自社のマネジメントが時代の変化についていけるか否か、もっと言えば、自社独自の技術・ノウハウ、製商品開発力、社員の質、流通、情報網など経営資源の再点検を図り、「たゆまぬイノベーションへの挑戦」を図って欲しい。
ふくい地域経済研究第23号