福井県立大学地域経済研究所

メールマガジン

  • 大学生の就職におけるコロナ感染拡大の影響

     コロナウイルスの感染拡大及びそれに伴う様々な活動の自粛は、大学生、大学院生の就職活動にも多大な影響を与えている。
    企業の大学生等への採用活動は、文科省の指導もあり表面的には3年次、修士1年次の3月に広報が解禁となり4年次、修士2年次6月から採用試験が開始される。まさに大学生の就職活動が本格的に開始される時期に、コロナの感染が拡大し、3密を避けるために学生が企業と接触する機会となる「合同企業説明会」等が相次いで中止となり、企業は一時的に採用活動を停止することを余儀なくされた。福井県でも県が主催する就職イベントや大学内で開催される企業説明会が中止になり緊急事態宣言が発令されると、大学や就職の支援機関も閉鎖されるところが多く、大学生は情報の入手と企業との接触機会を失い就職活動がストップしてしまった。
    しかしながらここ数年、売り手市場と称されるように企業の採用意欲が高く、水面下で採用試験を実施し2月3月時点で内々定(正式な内定は10月なので、それ以前の内定を内々定と呼ぶ)を出す動きがみられた。つまり早期に採用活動を開始した企業や早めに動き3月前に内々定を獲得した学生は、コロナの影響をあまり受けずに済んだことになる。このことは2021年卒の内定獲得率の推移にも表れている。今年の4月1日時点の内定状況は、31.3%と好調で昨年の3月時点の内定率を10ポイント上回っていた(就職みらい研究所調査)。ところが6月時点になっても内定状況はあまり伸びない。昨年は65.3%であったが本年は56.9%と10ポイント程度低い状況だ。9月1日時点の内定率は85.0%と徐々に上昇してきているが、昨年に比べまだ8.7ポイント低い。
    採用活動が一時的に停止しただけでなく、緊急事態宣言が解除されても需要の減少や売り上げの低下から採用そのものの見直しや停止も相次いだ。ANAやJALの採用停止はニュースで大きく取り上げられたが、運輸業、宿泊業、外食産業、製造業等で採用中止や採用数の抑制が発表されている。残念ながら卒業まで厳しい状況が続くとみられる。
    コロナの感染拡大は、採用活動、就職活動の時期的な問題だけでなく、採用方法にも大きな変化をもたらした。これまでの採用活動は、対面を基本とし筆記試験、グループディスカッション、集団面接、1次2次面接のように進んでいた。当初は最終面接だけでも直接学生と会って決めたいという企業が多かったが、現在ではほとんどの企業がオンラインの面接で採用を決定している。この採用方法の変化は、学生、企業双方に移動時間と交通費、試験会場費等のコストの削減というメリットももたらした。Uターン学生は、大学の所在地近隣の企業も自分の出身地の企業もハンディなく受験することができる。最終試験に対面面接を取り入れるにしても、採用試験におけるオンラインの活用は来年以降も続くと予想される。
    経済環境の悪化が大学生の就職に影響する例はこれまでにもみられた。2008年9月に起きたリーマンショックは、その後大学生の就職状況が悪化し就職氷河期と称されている。2009年3月卒業生はリーマンショック時にほぼ就職活動が終了しており、内定率は95.7%と前年に比べ1ポイント程度の低下であるが、2010年91.8%、2011年91.0%と大幅に低下し2012年から93.6%と徐々に回復してくる。次年度の新卒者の採用は夏から冬の時期に決定する企業が多いと聞く。コロナの影響もおそらく、今年度よりは次年度以降の学生の就職により大きく出る可能性が高く、その影響は2、3年継続するであろう。
    実際に企業を回っている本学のキャリアセンターの担当者によれば、来年以降の新卒採用について(1)採用を中止する企業、(2)採用数を減少する企業、(3)なお採用意欲が高い企業があるという。採用意欲が高い企業においても、Uターン者を含め応募倍率は高くなり、競争は厳しくなる。
    大学生にとっては、しばらく厳しい就職状況が続くと思われるが、withコロナの新しい生活スタイルが求められることと同様に、就職・採用活動においても新しい様式が出てくるかもしれない。これまでの就職活動は学生の時間的負担が大きかった。ただ悲観的になるだけではなく、企業・学生の双方によるオンライン、リモート等の積極的な導入が学業と就職活動を両立させ新たな出会いが生まれることを期待する。

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  • 動物行動学・仏教・言語批判哲学

     ウィトゲンシュタイン(オーストリア1889-1951)の言語批判哲学を研究している。まったく関係なさそうな二つのところから言語批判哲学に繋がったので、ご紹介したい。
     一つ目は、ドイツの動物行動学者のユクスキュル(1864-1944)が考えた「環世界(Umwelt)」という概念。生物はみんな同じように世界を見ているわけじゃない。感覚器官は生物種ごとに性能が異なっている。だから同じ世界の住人でも、生物種ごとに捉えている世界は違っている、生物種ごとに「環世界」が異なっている、とユクスキュルは主張する。つまり知覚内容は感覚器官の性能と相対的に決まることになる。例えば、人間の耳は、20~20.000ヘルツの空気の粗密波しか音として聞くことができない。しかし犬の耳はもっと高い周波数の粗密波を音として聞くことができる。だから周りの人間には気付かれずに、犬に指示を出すことのできる犬笛というものがある。また、光の三原色は赤・緑・青だが、赤(700ナノメートル)・緑(546.1ナノメートル)・青(435.8ナノメートル)の3種類の電磁波だ。つまり光の三原色は自然そのものの性質ではなく、また光の三原色はこの3種の電磁波がもつ性質でもない。人間の眼がこの3つの波長の電磁波に生理化学的反応を起こしているだけだ。世界が見えているように見えるのは、世界そのものがそうだからではなくて、人間の眼の性能によってそう見えているのである。
     同じことが知性にも言えないだろうか。私たちは知識とは世界そのものを知ることだと思っているが、私たちの感覚に限界や制限があるように、私たちの知性にも限界や制限があるのではないか。例えば脳の構造上の限界や制限を考えることもできるが、ここでは言語を考える。それは、知性の働きの結果が知識であり、知識の表現が言語だからだ。しかし、言葉は世界を客観的に表現することができるのだろうか。言葉の上では、何にでも「それは、なぜ? どうして?」と問えるが、物事には必ず原因があるのだろうか。因果関係は世界の見方の一つに過ぎないのではないか。そもそも、主語・述語という文法は世界自体の構造なのだろうか。いや、知識や言語は私たちがより便利に生活するための、よりうまく欲望を満たすための道具ではないか。
     もう一つは仏教。仏教の目的はシンプルで、苦が生じるメカニズムを明らかにして、苦を消滅させることにある。そして仏教の世界観は、無常・無我に尽きる。無常とは常なるものは何もない、あらゆるものは時とともに変化し移ろい行く。そして、無我とは人間の自我ばかりではなく、あらゆるものに自性、つまり常なる本質がないということ。
     では、苦の生じるメカニズムとは。この世が無常・無我であることを知らないこと、これを「無明」という。この無明に縁って、煩悩が生じ、この煩悩が満たされないことによって苦が生じる、というものだ。では、苦を消滅させるには。一つは煩悩を満たしまくること。しかしこれはできない。苦の典型は老・病・死だが、これらを回避する術はない。もう一つは、この世が無常・無我であることをよくよく知って、無明を解消して、それによって煩悩を生じなくさせて、苦を生じなくさせるという仕方だ。こちらが仏の教えに他ならない。
     逆に常なるものがないと成立しないのが「分別」である。分別の基礎は分けて区別することにある。しかし分けられ・区別される物事を安定しているもの、つまり常なるものと看做さなくては、分けようも、区別しようもない。そして、分別するということは、物事を区別すること、分節化すること、概念化すること、そして言葉で表現すること、要は物事に対して知性を使って対処することである。そして分別こそが無明の証に他ならない。したがって、仏教はこの人間の知性を疑う。ここに仏教の知識批判・言語批判がある。悟りの智慧は、まさに「無分別」智なのだ。

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  • 新型コロナウイルス感染症による死亡の状況

     4/7の緊急事態宣言発出から4ヶ月弱が経過し、様々な社会経済データが明らかになりつつある。我が国におけるコロナクライシスの影響を現時点で考察するにあたり、中でも最も重大な結果である死亡に焦点を当ててみたい。
     新型コロナウイルス感染症による国内での死亡者数は、7/28段階で998人である。これに関しては、欧米諸国と比べた人口当たり死亡者数の少なさや、毎年の季節性インフルエンザによる死亡者数と比べた水準の低さを指摘することができる。
     一方で、感染者が何らかの理由によりPCR検査を受けないまま死亡した場合、死亡診断書には感染の結果生じた他の疾患が死因として記録されることが起こり得るため、この感染症による死亡者数を正確に捉えることはできないとの声がある。国立感染症研究所では、インフルエンザに関してこれと同様の疑問に応えるための一助として、シーズンごとに超過死亡を推計している(注1)。インフルエンザが流行していなかった場合の死亡者数を推定し、実際の死亡者数との有意な乖離が生じた場合に、超過死亡が観察されたと判定している。
     この推計によれば、2019-2020シーズンにおいて全国の対象都市の合計で超過死亡は観察されていない。東京に限ると超過死亡が認められるものの、その水準は過去3シーズン並みかやや低い程度にとどまっている。この結果から新型コロナウイルス感染症による影響を厳密に評価することはできないものの、同感染症による一定程度の明確な埋もれた死亡者の存在は浮かび上がらず、先の数字が実態に近いとの推測が成り立つ。
     次に、間接的な影響をみるために自殺をとりあげる。我が国の自殺者数は2010年頃から前年比2~9%の減少傾向にあるが、2020年1~6月はその水準を超える減少となった(対前年同期比▲9.9%)(注2)。なかでも緊急事態宣言下の4月(〃▲18.0%)、5月(〃▲16.0%)は大幅減であった。
     近年の自殺の要因は、多いものから健康、経済・生活、家庭、勤務、男女、学校の順となっている。このうち新型コロナウイルス感染症に関係するものとしては、受診控えや運動不足からの深刻な健康問題、倒産や失業等の経済・生活問題、DVや虐待等の家庭問題などが考えられる。その他、人間関係が一時的に希薄化したことで、勤務、男女、学校を要因とする増減が生じている可能性もありそうだ。
     要因別、年齢別等の詳細な結果が示されないと正確な分析はできない。しかしながら、少なくとも現時点では、新型コロナウイルス感染症による自殺の増加は生じていないと言える。経済・生活問題を要因とする自殺は、あくまで現時点でのことではあるが、最低限の雇用が維持され会社も個人もなんとか食いつないでおり、増加にまでは至っていないことがうかがえる。現に、就業者数は大きく減ったが失業率は微上昇にとどまっている。また、巨額の雇用調整助成金とそれに伴う休業者の大幅増が、当面の支援策・対処法として機能していると言えよう。さらには、多くの業種や階層において、危機意識が共有化されたことによる連帯感が、まだ存在していることも大きいのかもしれない。
     直接・間接を問わず、新型コロナウイルス感染症による死亡数が、今後も低水準でおさまることを願いたい。そのためにも、まずは各所において感染拡大の防止と医療体制の一層の充実に努めつつ、新たなビジネスや生活様式に機敏に対応しながら、経済活動を冷静に元に戻していくことが重要である。さらには、この数ヶ月で発生・増幅した様々な格差や差別の解消に向けて、支え合う姿勢と具体的な支援策が求められよう。

    P.S. 私が執筆するコラムはこれが最後になりました。9月末で任期満了を迎え、更新が叶わず退職となります。10年間、ありがとうございました。

    注1:国立感染症研究所 感染症疫学センター「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」2020年5月24日掲載
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/9627-jinsoku-qa.html

    注2:警察庁「自殺者数」(2020年6月末の暫定値)
    https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html

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  • ブラック・エレファント(=COVIT-19)にどう立ち向かうか

    新型コロナウィルスの脅威は止まるところを知らないようだ。世界銀行は6月、2020年の世界経済はマイナス5.2%、仮に第2波が来た場合はマイナス7.8%まで落ち込むと予測した。いずれにしても、戦後、最大の落ち込みとなる。世界貿易機関(WTO)も4月、2020年の世界のモノの貿易が最大で32%、楽観シナリオでも13%落ち込む戦後最悪の結果を予測している。IMFのゲオルギエワ専務理事によれば、「世界の9割近い170カ国の経済が悪化する」。これはリーマン・ショック時の6割を大きく上回る。

    特に、衝撃的なのは、一人当たりGDPの伸び率がマイナスとなる国の割合が93%にも達することだ。これは、大恐慌のさなかにあった1931年の水準(84%)を上回っているだけでなく、90%を超えたのは世銀が分析対象としている1870年以降で初めてのことである。こうした新型コロナウィルスの世界的流行は途上国に深刻な打撃を及ぼし、「6000万人が極度の貧困に追い込まれることになる」(マルパス世銀総裁)。

    今後に向けての問題点が2つある。第一に、企業戦略面からみた場合、事業環境の見通しが極めて難しくなっていることだ。リーマン・ショックの際には、中国が4兆元(当時のレートで約57兆円)の大規模経済対策によって世界経済を下支えしたが、今回は、そうした役割を担える国や地域が見当たらないのだ。過去10年間、世界経済の3分の1を引っ張ってきた中国は、2020年1~3月期のGDPは前年同期比マイナス6.8%と、四半期ベースでの記録が残っている1992年以降、初めてマイナス成長に落ち込んだ。それでも、世銀によれば、2020年は1%増とプラス成長を確保する見込みだが、1976年以来の低水準となる。138ヵ国との間で数百のプロジェクトが動いている「一帯一路」では、中国から融資を受けた途上国がコロナ渦で債務不履行に陥るのでは、といった懸念が広がっている。もし、そうなれば、中国が貸し付けた巨額の資金が消えてしまうことにもなりかねない。さらに、香港問題などを機に、米中による新たな冷戦時代が幕開けしたことで、国際経済の枠組みにも変化が生じる可能性が高い。そうなれば、企業はグローバル・バリューチェーン戦略などについて根本から見直す必要に迫られることになるだろう。では、どうすればよいのか。

    このように、変化が激しく複雑さが増している事業環境に対処する1つの方法は、シナリオ・プラニングを通じて複数の選択肢を検討しておくことである。さらに、このような事業環境に適した経営戦略モデルの一例として、ボストン・コンサルティンググループ(BSC)のパートナーであるマーチン・リーブス氏が唱えるアダプティブ(適応型)戦略も有効と思われる。詳細は省くが、たとえば、オンラインDVDレンタルなどを手掛けるネットフリックス社は、特に、「人材の力」を引き出す組織能力に秀でている。同社では、会社の成長に従って社員の自由度を制限するのではなく、むしろ高め、革新的な人々を引き付けて育成し続けることを目指している。そのため、ネットフリックスは二種類のルールしか持たない。取り返しのつかない大失敗を防止するために設計されたルールと主にコンプライアンスに関するルールである。休暇についての取り決めも勤務時間の管理もない。労働時間ではなく、すべきことを重視している。テレワークが進む日本でも参考になるかもしれない。

    2つ目の問題点として忘れてならないのは、今後、医療体制が整っていない新興国や途上国で感染拡大が起こった場合、医療崩壊による大惨事につながるリスクが高いことだ。これまで、途上国がこうした災害に巻き込まれた際には、多国間主義による国際協力によって、迅速かつ高度で組織的な救援活動が可能であった。しかし、今回はやや状況が異なる。まず、医療先進国自体が自国での対応に追われている。さらに、問題なのは、自国第一主義や単独行動主義(ユニラテラリズム)が米国、ロシア、中国などを中心に世界に蔓延しつつあることである。これは、ある意味、「ブラック・エレファント」とも隠喩される今回の新型コロナの核心を突いているとも言える。

    「ブラック・エレファント」とは、事前にはほとんど予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与える「ブラック・スワン」現象(理論)と「見て見ぬ振り」を意味する「エレファント・イン・ザ・ルーム(部屋にいる象)」を掛け合わせた造語で、いずれ大変なことになるとわかっているのに、なぜか見て見ぬ振りで、誰も対処しようとしない脅威を表す。今回の新型コロナに関する中国の初期対応(情報の隠蔽)や安全より経済を優先するトランプ大統領、さらにはブラジルのボルソナロ大統領の対応がまさにそうである。今回のパンデミックで、ブラック・エレファントのリスクと対処法が確認できたのは不幸中の幸いと言えなくもない。今後、再びパンデミックが起こらないように、我々が為すべきは「情報の隠蔽」、「不平等」、「野生動物などの生息地の破壊」、さらには「国際協力・協調の欠如」といったブラック・エレファントの発生源を少しでも無くしていくことである。容易ではないが、努力する価値はある。

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  • 緊急事態が解除された今。企業は新たな入口に立たされた。

     4月16日に日本全域にまで対象地域が拡大した新型コロナウイルス感染に係る緊急事態宣言は、5月14日に39県、21日に3府県、そして25日(18時頃)に全面解除となり、私たちは新たな入口に立たされた。
     さて、5月20日に東京商工リサーチが「新型コロナ」関連の経営破綻が全国で169件(2月2件、3月23件、4月84件、5月(1~20日まで)60件)に達したことを発表した。
     業種別では、インバウンド消失に加えて、国内旅行や出張の自粛でキャンセルが相次いだ宿泊業が最多、次いで、緊急事態宣言で来客数の減少や臨時休業、時短営業の影響が響いた飲食業が多くなっている。
     経営破綻した企業は、コロナ禍以前より業績不振が続き、人手不足や消費増税、そして、コロナウイルス感染症拡大の影響が決定打となって、資金繰りが厳しくなったケースが目立つ。全国的に経営破綻が広がる中で、幸いにも福井県はゼロ(5月20日時点。他、和歌山県、島根県、高知県、長崎県のみがゼロ)であった。ただ、倒産集計の対象外である負債1000万円未満の小規模・零細企業の倒産や事業継続を諦めて廃業を決断するケースは耳にしているし、今後、顕在化してもくるだろう。
     過去のバブル崩壊やリーマンショックでは、金融資産の暴落に伴う金融機関や企業の損益計算書の悪化をきっかけにして、企業から消費者に影響が広がった。今回は、これらとは異なり、感染回避のための消費急減が直撃した。これを背景に、B2C企業と比較するとB2B企業への影響が限定的となり、第2次産業に特化している福井県では、影響が少なかったのかもしれない。
     ただ、緊急事態宣言が解除された後の需要回復局面でこそ、企業経営においては気を引き締める必要がある。というのも、企業の資金需要は売上増加時期に増えるものであり、ある程度の資金的な余裕がある状態で回復局面を迎えなければ資金に困窮する。早期に売上を損益分岐点にまで戻さなければ、長期にわたる赤字や、廃業・倒産を招くことにもなる。
     他方、一度減少した需要は、簡単には元に戻らないことも事実で、例えば、テレワーク等の急速な普及は、宿泊業や飲食業へのニーズの減少を維持させる。この影響が長続きすれば、当然、第2次産業への影響も出てくる。今までの財・サービスを提供し続けるならば、従来以上に固定費や原価を下げるか、単価や付加価値を上げなければならないし、新たな需要に合わせた財・サービスを産み出すか、ビジネスモデル自体を根本的に見直す必要がある。
     私たちは、この数か月でリスクに対して敏感になった。感度が一気に高まった。「新たなウイルス」という情報が流れただけで、財・サービスや人の流れを抑制されることになるであろう。企業は、このような事態が発生することに備えた態勢を常に取り続けなければならない。サプライチェーンの脆弱さが露呈し、食料品などは、一部の国で輸出規制という保護主義的な動きもある。サプライチェーンの単純化や、需給に合わせた一定地域内でのモノの留め置きという動きも更に強まる可能性がある。
     足元と、モノや人という実体(リアル)の移動が減るニュー・ノーマル(歴史的な大転換)という未来を見据えた舵取りができるのか。企業は新たな入口に立たされている。

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  • -新型コロナウイルス感染拡大の危機を越えて-

     4月16日、政府は新たに40道府県に対して緊急事態宣言を発令した。世界中で新型コロナウイルス感染症が広がる中、既に対象となっている東京都など7都府県を合わせ、これで日本全体が緊急事態下に置かれたことになる。期間は来月5月6日までとなっているが、果たして終息の目途がつくか否か疑問の残るところではある。
    ところで、この新型コロナウイルス感染症は、中国の湖北省武漢市の保健機関により原因不明の肺炎患者が報告されたのが始まりと言われている。日本での感染者確認は、今年の1月16日に入ってのことである。この日、日本国内の医療機関を受診した中国武漢市に渡航歴のある中国人男性が新型コロナウイルスに感染していることが判明した。4月17日現在、世界全体では患者数が215万8千人(死亡者数145千人)と200万人台を突破、日本国内でも9,309人(死亡者数191人)の患者数を数え、その動きは留まるところを知らない。
     一方、新型コロナウイルス感染症による影響は、いったいどのような状況となっているのか。経済的、社会的に大きなダメージを受けていることは間違いない。
     まず経済的課題について、ある国の経済学者は、この新型コロナウイルス感染拡大により、世界におけるGDPの2~3割が喪失すると述べている。では、具体的に産業間でどのような影響を受けているのか。一例として観光業の動向を見ると、昨年1年間で3,200万人が訪れた訪日外国人観光客数は、今年2月時点で前年同月比58.3%減の1,085千人、3月には同93.0%減の193千人(日本政府観光局調べ、3月推計値)に減少するなど悲惨な状況となっている。これに伴い観光関連産業の旅客運輸、宿泊施設、旅行代理店、各地の観光地は壊滅的なダメージを受けていることがうかがえる。無論、この負の連鎖は、一般の小売業、飲食サービス業、タクシー業、教育機関などの第3次産業に襲い掛かり、今のところ比較的ダメージが少ない製造業や建設業でも、その影響が広がっていくに違いない。そうなれば、中小・小規模事業所が多い北陸地方において、未曾有の打撃を受けることは必定である。例えば、福井県の場合、これまで内需がだめなら外需で、外需がだめなら内需でという具合にうまくバランスを取り、経済的にはバブル崩壊やリーマンショック時も日本全体と比べ比較的ダメージが少なく結構打たれ強い地域として知られていた。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症は、内外需両面での低迷により、福井県においても容赦なく経済的ダメージが拡大していくであろう。もはや新型コロナウイルス感染拡大による日本経済の低迷は必至であり、有無を言わさずそれに相応する経済対策が必要である。ただその場合、単なるバラ撒きではなく、終息後の将来を見据えた対策、例えば、生産性の低い福井県企業にとっては、業務のIT化や労働者のスキル向上などによる生産性向上を目指した支援策、或いはデジタル社会の到来を見据えた戦略的支援策が求められている気がする。そして、地域の企業は、この逆境をバネに業種転換や経営のスリム化を図ることを期待したい。ローテク産業からハイテク産業、都市型産業に切り替えていくチャンスの時と考えられないか。今やSosiety5.0の時代、AIやIOTといったデジタル技術革新の大きな波が押し寄せている。地域の企業には、今回の新型コロナウイルス感染拡大という危機を何とか乗り越えて、次の時代を担う産業社会の立役者になってもらいたいものだ。
     そして、もう一つ、大きな課題は社会的ダメージをどう押さえるかだ。医療崩壊、環境破壊、貧困、犯罪多発、教育システムの崩壊など、危惧する事象は山と積まれている。とりわけ命に係わる医療の現場は想像を絶する事態となっている。医療器材・病床や人手の不足、医療従事者に対する誹謗中傷、差別などとんでもない話を耳にする。今、私達一人一人ができること、それはコロナと最前線で闘っている医療関係の方々に敬意を払うこと、同様に幼児園の先生や児童館の先生など、一見目立たないところで社会的課題に立ち向かう方々にもっと敬意を払うこと、それが身近でできる一番の手立てではないか。
     いずれにせよ、今、世界全体がコロナウイルスという目に見えない敵との戦いを強いられている。しかし、我々はこの敵に負けるわけにはいかない。何故なら、この戦いで得た知見、技術・ノウハウを活かすことで、経済・社会システム、働き方、暮らし方、思想、価値観など多様な面でのパラダイムシフトが起こり、もう一段進化した社会へと進むことができるのだから。  

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  • 新型コロナウイルスもマスクも中国製

     昨年12月,中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症COVID-19が世界中に蔓延した。3月11日,世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は世界的な大流行を意味する「パンデミック」と認定した。3月30日現在(※),世界全体で感染者数717,457人,死者33,778人であり,日本はそれぞれ1,866人,54人(クルーズ船感染者含まず)であった。感染者で見れば,米国139,675人,イタリア97,689人,中国81,470人,スペイン80,110人,ドイツ62,095人,フランス40,174人に達している。しばらく世界で感染拡大が続くだろう。
     政府は,感染拡大を防ぐため,イベントや集会の自粛,小中高の臨時休校措置を要請した。大相撲,プロ野球,Jリーグ,プロゴルフなどのスポーツ競技が無観客開催,延期や中止となった。選抜高校野球も中止と決まった。東京五輪の開催に向けて準備が進んでいたが,3月24日,IOCの臨時理事会は東京大会を1年程度延期することを正式に決定した。選手,大会関係者,国民もいろいろな再調整が必要だが,何よりもコロナ感染の収束を望むだけである。
     新型コロナウイルスは見えないだけに始末が悪い。ひとが理性を失って行動する。薬局ではマスクや消毒液が売り切れ,再入荷も分からない。マスクは市民よりも医療現場で必要である。マスク不足は,日本で生産していないのが原因である。1985年のプラザ合意以降,極端な円高ドル安が進む中で,広大な市場と賃金の安さが魅力の中国で生産移転が進んだ。やがて中国は「世界の工場」となった。日本にも中国製品が溢れている。家電製品も日用品も,そしてマスクも中国製である。まさに「軒を貸して母屋を取られる」のごとくである。
     海外生産は,その分だけ国内の生産を不要とする。工場には雇用と技術とノウハウが満載であるが,それが丸ごと海外に移転される。移転した分だけ日本の雇用が減少する。海外子会社を含めた連結売上高が増大し,連結利益が「過去最高!」と報道されても,国内生産が増えなければ,日本の雇用も給料も増える訳ではない。政府や新聞が言うほどに豊かさを実感できないのは,そのためである。
     ここ5年をかけてブルドーザなどの建機メーカで,世界第2位のコマツを調査してきた。連結で売上高2兆7,252億円,営業利益3,978億円に達するグローバル企業である。ちなみに野路國夫会長は福井県出身である。売上高の87%は海外で,日本はわずか13%である。しかし,マザー工場制の下で,日本では基幹コンポーネントを生産し,それを多数の海外子会社に輸出して製品に組み上げる。日本で生産高40%を確保して,雇用と技術と競争力を日本国内で堅持している。「丸投げ型」海外生産とは一線を画するコマツの海外戦略である。
     福井でも,多くの企業が中国に進出した。市場の将来性と賃金の安さが中国進出の決め手だった。中国の成長とともに賃金上昇が続く中でメリットも薄れてきた。「日本回帰」を主張する論者も増えた。そこに今回のコロナ騒ぎである。コロナ収束後,中国進出のメリットを改めて再検討しても良い時期だろう。

    ※ 最新情報はhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html 「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」をご参照ください。

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  • 新型コロナウイルスからの教訓

     新型コロナウイルスを巡る日本社会の混乱をみながら、私は3つのことを確認できたような気がします。

    (1).ビッグ・イベント頼みの経済活性化の危うさ

     東京オリンピック及びその開催に照準をあわせた東京大開発事業、リニア中央新幹線、カジノ、大阪万博などなど、日本では今後短期の間に超ビッグ・イベントをいくつも予
    定されています。北陸新幹線の延伸が霞んでみえるほどです。
      これら周辺の環境整備を含め多額の公共投資が行われCool Japanはますます魅力的になるでしょうし、海外からもさらに多くの注目を浴びることになります。日本は再び自
    信を取り戻し、国際的な信用も回復する。景気も上向き、東日本大震災以降の念願だった高い経済成長率を達成する。少子高齢化社会でも持続可能な社会保障制度にも光が見
    えてくる。
      あまりにも出来過ぎたシナリオでした(私のなかでは既に過去形)。私たちの足下には、コツコツと地道に成し遂げねばならないことが山積しているのではないでしょうか。

    (2).不要不急の事業の多さ

     つい先頃まで予定されていた様々なイベントが俄に中止、ないしは延期され始めました。来月初頭に予定されていたある会合の主催者から昨日こんなメールが送られてきました。
    “新型コロナウイルス等に対する感染症対策の準備を進めてまいりましたが、拡大防止の観点より、無観客で開催のうえ、後日、@@@ホームページで動画配信させていただ
    くこととなりました。参加を楽しみにしておられた皆様には誠に申し訳ございませんが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。”
    いえいえ全く問題ありません。ご連絡有り難うございます。
     他方、子ども達が楽しみにしていた社会科見学や卒業式にあわせて行う予定であったお祝いの会なども中止になりました。残念ですがこればかりはしかたがありません。今後の関心事は、どの時点までこの自粛が続くのだろうか、ということです。新年度が始まる春ごろまででしょうか、それともオリンピックの閉会式終了まででしょうか。と同時に、不要不急とみなされる事業や仕事はこれを機に綺麗さっぱり整理しても良いかもしれません。堀江貴文氏は2016年に「99%の会社はいらない」という本を出されています。会社だけでなく仕事の中身を見直す良い機会です。ベーシックインカムの議論とあわせれば、案外、人口減少や労働力不足が杞憂に終わるかもしれません。

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  • 回復力に力強さを欠く日本経済

     早いもので、2020年に入り1か月余りが過ぎた。ここでは、2019年の日本経済を振り返るとともに、本年、2020年の日本経済を展望したい。
     さて、2019年の日本経済を振り返ると、年初来、雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費が緩やかな回復を続けたが、輸出は中国経済の減速や米中貿易摩擦のあおりなどから、精彩を欠く幕開けとなった。また、年央以降は堅調を持続した国内消費が冷夏の影響や自然災害の発生により一抹の不安材料を露呈した他、生産活動も自動車工業や生産用機械工業などの不振により不冴えな状況が続いた。ただ、内閣府が12月9日に発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値をみると、物価変動を除いた実質で前期比0.4%増、年率換算では1.8%増と1次速報値(前期比0.1%増、年率0.2%増)を大幅に上回る結果となっている。この要因は、内需における設備投資の増勢や個人消費の上振れ、とりわけ10月に実施された消費増税前の駆け込み需要の発生による影響が大きく発現したためとみるべきであろう。
     また、秋口に入っては、各種の対策効果から消費増税の最悪シナリオが薄められはしたものの、個人消費の一時的な下振れは避けられず厳しさが増す一方、企業活動では生産面でスマートフォン販売の底入れを受け、電子部品・デバイスが増加基調をたどったとみる見方が有力である。ただ、世界景気が全般的に勢いを欠くなか、輸出全体の力強い回復は期待し難い状況にある。
     一方、2020年の経済情勢について、まず需要部門では、消費増税の個人消費への影響については、今回の税率引き上げ幅が2%と小幅で、軽減税率の導入や教育・保育の無償化などにより家計への影響は軽微で、個人消費への悪影響が最小限にとどまること。さらに、人手不足を背景とした雇用所得環境の改善や各種の政策効果などが下支えに作用するなどから、個人消費は持ち直しの動きを強めるものと考えられる。ただ、新年度以降の実質賃金が伸び悩めば回復力は弱いとみるべきであろう。また、設備投資も企業のキャッシュフローが潤沢な中、人手不足を背景とした合理化・省力化投資、研究開発投資、建設投資などを中心に持ち直しが続くことが期待されるが、米中対立など不確実性の高さなどを考慮すると投資意欲の減退も視野に入れておくべきであろう。一方、供給部門については、外需面で、中国経済の減速を主因に足元の財輸出は伸び悩んでいるものの、中国政府の景気下支えから徐々に持ち直しに向かい、このところの下振れリスクも払しょくされることが期待されるが、引き続き海外経済の不確実性には十分留意する必要がある。そのため、2020年の日本経済は、需要部門、供給部門ともにまだら模様の中、力強さ欠く展開が続く可能性が強いとみるべきであろう。
     ところで、今年に入り特に注目を集めている話題を挙げるとすれば、それは今年3月から日本でも5G移動体サービスが始まる話であろう。ちなみに、広義の意味でのデジタルツール、PC(パーソナルコンピュータ)が初めて日本に登場したのは1970年代初頭のことと記憶している。それから半世紀あまりを経過し、今やPCは時代遅れとなり若者はスマホ、モバイル通信ネットワーク、いわゆる5Gの時代を迎えた。そのほか人工知能(AI)、ICT、ロボット、ビッグデータといった多様なデジタルツールが登場し、今やSociety 5.0の時代。私たちの暮らし、仕事の仕方、経済社会システムそのものが大きく変化しようとしている。こうした変動を技術革新の波からみれば、1970年代以降の2020年代はシュンペーターが定義したコンドラチェフの波(注)が押し寄せている時代のように思える。いずれにせよ時代は大きく変化する。その中で企業はこうした多様なデジタルツールを活用しながら、さらなる経営革新を図ってもらいたいものだ。

    注:景気の循環には特徴的なパターンが見られ、技術革新を主因に約50年の周期で循環している景気循環をいう。

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  • あなたの会社は健康ですか?~倒産指数/企業力指数~

    東京商工リサーチによると、2019年の1月から11月にかけて、福井では42件の倒産が発生し、負債総額は約373億円でした。2018年の1年間では、39件倒産し、負債総額は約35億円でした。今年は12月前に昨年の倒産件数を超えています。負債総額が昨年の10倍以上なのは、2月と5月に100億円超の倒産が発生したためです。倒産の原因は「販売不振」が多く、「他社倒産の余波」や「既往のシワ寄せ」、「運転資金の欠乏」などです。
    会社が倒産しないためにはどうすれば良いのでしょうか。会社を人の体に例えて単純に考えれば、大切なのは「健康」です。定期的に健康診断や検査を受け、自分の体の状態を知ることができれば、様々な対策を取ることができます。会社でお金は「血」に例えられますが、血液検査によって様々なことがわかります。有名な検査項目であるγ-GTPは、値が高ければ肝臓に問題があることがわかるので、お酒を控えるなどの対策が取れるでしょう。もし基準値を大幅に超えていれば、精密検査や治療を受けることもできます。この血液検査にあたるものが、会社では会計です。会計によって作られる数値を調べれば、会社は健康なのか、問題がどのあたりにあるのかなどを判断できます。
    検査結果の数値が基準値を超えているかを見比べる程度なら、素人にもできます。必要な検査を行ない、様々な項目の数値を分析し、健康なのか、経過観察が必要なのか、緊急入院の必要があるのかなどを判断するには、専門家である医師の判断を仰ぐ必要があります。会計も同様で、会計数値を理解・分析し、総合的に判断するには、専門知識と経験が必要になります。
    本来であれば、社長から現場の社員まで、全員に会計教育を行うのが良いのですが、会計教育を十分に行うのは時間もコストもかかります。そんな現実をふまえ、一定の精度で簡単に会社の健康状態(経営状態)を判定する方法はないか、と開発された指標が「倒産指数/企業力指数※」です。この指標は、ある程度の信頼性を有しながら、入手しやすい会計数値による、簡単な計算式で求めることができます。また絶対的な判定基準を持ち、総合的な判断が可能です。
    ※企業力指数は、倒産指数をもとに一部修正した指数になります。

    (1)倒産指数の計算式(一般式)

    倒産指数は、5つの指数(収益力指数、支払能力指数、活力指数、持久力指数、成長力指数)の平均で求められます。倒産指数により会社全体の経営状態を判定し、5つの指数により、5つの能力から判定することが可能になります。

    倒産指数=(収益力+支払能力+活力+持久力+成長力)÷5={売上高÷(営業費用+支払利息)}+流動資産÷負債※+売上高÷総資本+自己資本÷負債+自己資本÷(自己資本-当期純利益)}÷5

    ※大企業の場合「支払能力=流動資産÷流動負債」(特別式)

    (2)判断基準

    基本となる判断基準は「1.0」です。1.0を超えていれば問題なしと考えて良いでしょう。倒産指数はもちろん、収益力指数など5つの指数の判断基準も同じです。指数が1.2以上の場合は「健康」な状態です。0.8~1.2の場合は「普通」か「順調」な状態です。油断せずに監視します。0.6~0.8の場合、「危険」か「不調」な状態です。細心の注意をもって対応する必要があります。0.6以下の場合は「危篤」状態です。機敏な対応が必要になります。

    ※例外として債務超過の場合、成長力が異常な数値になります。

    (3)活用方法

    まずは、自社の決算書を用意して計算してください。自社の経営状態を一目で判断できると思います。5つの指標もあわせて数年分計算すれば、自社の経営状態の良好な点や問題点、傾向がわかります。問題の所在・傾向がわかれば、問題を改善し、良好な状態に向うように、経営戦略・計画の策定、業務改善の実施などに役立てることができます。

    古来より、彼を知り己を知れば百戦殆からずと言います。己を知り、弱みを強みに変える第一歩を踏み出すために、ぜひ会計を活用してください。

    □詳しくは下記の参考文献をご覧ください。

    ・現代会計カンファランス(1997)『倒産指数-危ない会社ズバリ判別法』日本経済新聞社

    ・松本敏史・富田知嗣(1999)『あなたの会社の偏差値診断-資料:全上場2211社企業力ランキング』税務経理協会

    ・松村勝弘・松本敏史・他(2015)『新訂版 財務諸表分析入門』ビーケイシー

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