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「食料・農業・農村基本法」の理念は実現されたか?
「食料・農業・農村基本法」が制定されて、今年でちょうど20年になる。周知のように、「農業基本法」(1961年)に代わって制定された新しい基本法は、理念が大きく転換した。その第1条(目的)には、次のように定められている。
「この法律は、食料、農業及び農村に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。」
すなわち、それまでの農業基本法が、農工間の生産性格差の是正を通して農業の発展と農業従事者の地位向上をめざしたのに対して、新しい基本法は、狭義の農業政策にとどまるのではなく、消費者にも軸足を置き安全・安心な食料を供給する食料政策、生態系の維持や環境保全、自然災害の防止やレクリエーション・教育の場など、農業が有する多面的な機能を重視する農村地域(資源・環境)政策を同列に位置づけ、農業・農村の持続的な発展を「総合的かつ計画的」に進めようとした。この背景には、いわゆる農業の近代化や構造改善では法の理念が実現しないという反省があった。そこで新しい基本法では、農業の問題は、単に生産者や農業団体だけではなく、国や地方公共団体はもちろん、食品産業等の事業者や私たち消費者も責務を果たすべきものであり、「国民生活の安定向上」や「国民経済の健全な発展」にとっても重要な問題であることを明確に謳ったのである。
法制定から20年、果たしてこうした理念は実現したであろうか。
安倍第2次内閣が発足した2012年頃と現状(2017~18年度)とを比較してみると、農業総産出額(8.5兆円→9.3兆円)、生産農業所得(2.9兆円→3.8兆円)、農林水産物・食品の輸出額(4,500億円→9,100億円)では伸びがみられる。また、法人経営体数(1.4万法人→2.3万法人)、担い手への農地利用集積率(47.9%→56.2%)、飼料用米の生産量(16.7万t→42.1万t)なども増加している。安倍政権は、発足後すぐに「農業の成長産業化」を提唱し「産業政策」や「構造政策」(大規模化政策)に重点を置いてきたが、これらの数字の限りでは、一定の成果が現れたとみてよいであろう。しかしその一方で、農業就業人口(251.4万人→175.3万人)、基幹的農業従事者(177.8万人→145.1万人)、肉用牛飼養頭数(272.3万頭→251.4万頭)などは減少している。
農業の成長産業化政策は、農業経営を大規模化・施設化し、担い手の構造を少数精鋭化することに重点が置かれる。その結果、上述のように金額面ではある程度の増加を示しているものの、その伸びを牽引している畜産や面的に多くを占める水田農業の基盤は弱体化しつつある。食料自給率は上昇の兆しがみられず、農業の多面的機能を発揮する上で不可欠な農村コミュニティの崩壊が指摘され、遊休・荒廃農地も今なお増加している。このことは、法の理念である農業政策、食料政策および農村地域政策との調和のとれた推進にとって決して望ましいことではない。蛻農化や農村地域の空洞化を防ぎ、食、農、地域が結びついた社会をどう実現していくのか。依然として課題は山積している。米中貿易戦争の正当性と日本企業への影響と対策に向けて
6月29日、G20首脳会議の合間に行われた米中トップ会談で、米国の対中輸入品に対する「第4弾」の制裁関税はひとまず見送られ、収束に向けた対話が再開されることとなった。しかし、昨年7月から米中双方が発動している第3弾までの制裁関税は維持されたままとなっており、国際経済は緊張から解放された訳ではない。
今回の貿易戦争は当初、米国の圧倒的優位を背景に早期決着を予想する声が支配的であった。しかし、トランプ大統領が5月5日、事前合意の重要部分が「ほとんど削除されていた」として、対中経済制裁の強化を突然ツイッターで発表したことには、習首席の立場と面子を軽視した米国の驕りと決着を急ぐ焦りを感じずにはいられない。
米国が要求してきた中国に進出する米国企業に対する技術移転の強要禁止に対して、中国政府は今年3月の全人代において、行政機関による外国企業に対する技術譲渡の強要禁止を盛り込んだ「外商投資法」を成立させ、これで妥結を図ろうとしていた。ところが、同法は企業間の取引を通じた技術移転の強要には触れておらず、抜け穴が多いことから、米政府は全面的な技術移転の禁止にまで法制化するよう求めた経緯がある。中国は内政干渉だとしてこれに強く抵抗している。また、産業補助金制度の削減要求などは、正に国家資本主義による中国の産業政策の根幹に係る部分に当たる。さらに、中国が貿易協定に違反した場合の一方的経済措置といった屈辱的な案など、中国内での求心力の回復を目論む習近平主席にとって、到底、安易に応じられるような内容ではなかったことは想像に難くない。
一方、解決が再び先送りになったことで心配されるのは、米中とのかかわりが深い日本への影響である。一国の経済が輸出にどの程度依存しているかを測るには、GDPのうち、国外で最終的に需要される部分の割合(国外最終需要比率)をみることが望ましいが、現在、OECDとWTOが共同開発した付加価値貿易指標(TiVA)によってこれが可能となっている。最新のTiVA(2018年12月公表)によると、2015年の日本のGDPに占める国外最終需要比率は14.4%に上る。次に、同指標から日本の国外最終需要に占める各国の割合を見ると、景気の先行きが懸念される中国向けが20.6%を占める。しかし、最大のパートナーは米国であり22.2%を占める。これは、日本と中国を含む東アジアのサプライチェーンを通じて最終ユーザーとしての米国に輸出されるモノも含まれるためだが、これらは米国の対中制裁関税の対象となる可能性がある。さらに、今後、懸念されるのは米国の貿易赤字の制裁対象として日本そのものに矛先が向けられる可能性である。なぜなら、付加価値ベースでは、日本の対米貿易黒字は総額(グロス)で見た場合よりも約60%増加するが、当然、こうした実態は米国政府も把握しているはずだからである。
しかし、そもそも、米国が中国への制裁関税の主な根拠としている対中貿易赤字については、国際貿易の拡大に応じて、国際流動性を供給するためにドルを刷り続ける基軸通貨国の宿命(国際流動性のジレンマ)に過ぎないとの説があるほか、保護政策による関税の上乗せは、通常、輸入品価格の上昇と金融引き締め策によるドル高をもたらすことになり、輸出への悪影響から、結局、当該国の貿易赤字の解消にはつながらないとされる。さらに、米国が貿易赤字国を相手に報復関税の掛け合いになった場合はより深刻な事態が懸念される。1930年スムート・ホーリー関税法では報復が報復を呼び、米貿易は半分以下に落ち込んだ。こうした悪循環に陥らないためにも、米国は節度を持って貿易交渉に望むべきである。
一方、21世紀は不確実性がより一層高まる時代であることを肝に銘じ、どんな企業であっても、不測の事態に備えて、今からでも、国際戦略におけるポートフォリオの再構築を図るなどコンティンジェンシープランを用意しておくべきであろう。新しい決済方式
新しいものが好きで、社会の変革を予感させるような新技術には特に目がない。飛びついた製品やサービスが残念だったり、すぐに陳腐化したりすることも少なくないが、それでもこの性分は止められない。
FeliCaベースの決済方式は、Edyに始まりQUICPay、Suica、nanaco、WAONなど、ありとあらゆるものを使い倒してきた。スマホ1台でレジや改札を通るスマートさは、後戻りできない便利さである。iPhoneにチップが搭載され、県内の北陸本線にもICカード改札機が導入されたいま、モバイルSuicaを使わない理由が私にはわからない。
そこに、バーコードやQRコードをベースとする新しい決済方式が我が国でも開始され、利用が広がりつつある。
そして2018年12月、後発のPayPayが20%のポイント還元(実質約17%値引き)という桁違いのスケールのキャンペーンを打ち、一気にシェアトップに躍り出た。今回、私が飛びついたのはこれである。
スマホにアプリをダウンロードし、クレジットカード等を紐付ける。簡単すぎて怖いくらいである。
決済時のアプリ立ち上げと、読み取り等で店員と呼吸を合わせる必要があることが、FeliCaと比べて余計で面倒だと感じた。使える店舗等がまだ限られていることもあり、キャンペーン終了とともに私は使わなくなった。
当初、不正利用による被害が生じたようで、そこには脆弱なセキュリティの存在が指摘されている。後に改善されたが、クレジットカード情報をもつ悪意ある犯罪者の安全な現金化プラットフォームになりかねないものであった。
この新しい決済方式を使ってみて、FeliCaの凄さ(消費者が便利、高安定性)が改めて浮き彫りになったが、逆にここまで精緻な仕組みを構築しなくても、実用に耐えうることを実感した。
それ故に手軽に店舗が導入可能(初期導入費用&決済手数料&送金手数料0円、最短翌日入金)なのであるが、キャッシュレス決済比率が低くキャッシュレステクノロジーがガラパゴス化したこの国で、バーコードやQRコードをベースとする決済方式がどこまで普及するのだろうか。
インバウンド狙いの小さい新しいお店において、クレジットカード決済やFeliCaを導入せず、バーコード決済のみという流れが主流になるかどうか。
個人間送金の便利さに多くの消費者が気づくかどうか。
その動向に興味は尽きない(自分でこの新しい決済方式を利用する興味は既に薄れた)。オーナー経営者一族の核家族化は、事業承継に影響を与えるのか?
少し古くなるが、2017年11月19日の日刊工業新聞に、以下の記事が掲載された。
「事業承継問題をこのまま放置すると2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性がある―経済産業省・中小企業庁が衝撃的な試算をはじき出した。今後10年で70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人。うち約半分の127万人が後継者未定だという。大量廃業の危機が目の前に迫り「大事業承継時代」を迎えた日本」というものだ。
650万人というと、福井県の人口に相当する数の雇用が、今後8年程継続して消滅していくということになる。
他方、福井県にとっては、興味深い資料も公表されている。2018年11月13日に帝国データバンクが公表した「全国「後継者不在企業」動向調査(2018年)」の結果だ。
日本企業の後継者不在率は、全国平均66.4%と言う。およそ3社中2社が「後継者がいない(未定)」ということになる。そうした中で、これをエリア別に見ると、際立って後継者不在率が高いエリアは「北海道(73.5%)」、一方で、「四国(52.8%)」が最も低く、北海道と四国では20.7ポイントもの格差が生じてる。では、北陸エリアや福井県の状況はどのようになっているのだろうか。
北陸エリアの後継者不在率は58.2%、福井県は58.7%だ。ちなみに、富山県は59.9%、石川県は50.1%である。北陸エリアや福井県は、「後継者がいない、または未定」という会社が、全国に比べると少ないということを、この結果は物語っている。
ここで浮かび上がる疑問は「なぜ福井県の後継者不在率は、全国水準を下回っているのか」ということ。他方、「福井県や北陸エリアの後継者選定と決定の方法を調べることで、事業承継問題を解決に向かわせるヒントが得られるのではないのか」という興味関心が湧いてくる。
先般、家業を継いだ嶺南の後継経営者2名と話す機会があった(その場には、地域産業・企業支援機関の事務局長、独立した社労士の方、これから家業を継ぐために、県外から戻ってきた後継経営者候補の方もいた)。
この2名が共通して発したコメントが、実に興味深かった。事業承継の支援を行ってきた筆者の肌感覚では、後継候補(ここでは、娘・息子に限ってだが)に会社を継ぐことを決断させるには、「幼少期からの刷り込みが大事」という意見と、「娘・息子の人生なのだから、一切、継ぐことを促したことがないけれども、決断してくれた」という意見に二分している。そこで、2名に、家業を継ごうと決断した理由を尋ねたところ「将来、会社を継いでほしいという両親の言葉よりも、幼少期から日常的に祖父母から継いでほしいと、言われ続けたことが影響している」のではないか、と言うのだ。
ここでひとつの仮説が設定できる。「福井県の三世代同居率の高さが、後継者不在率の低さに影響を与えているのではないのか」ということである。
だから「三世代同居がいい」や「祖父母が幼少期から刷り込むことがいい」と主張したいわけではない。仮説を検証するために、福井県企業の事業承継の実態を調査し、分析することに意味があり、加えて、この検証作業を通じて、福井県は無論、日本の後継者不在率を低くする方策が何か示唆を得ることができるのではないかと、感じずにはいられない。
日本の事業承継問題を解決に向かわせるモデルを、福井県から全国に発信できるのではないかと思うばかりである。大雪と投資経済計算
昨年の大雪の時、数時間毎にスコップで雪かきをしながら、実感したことがあります。この雪が福井を、福井の人を強くしたのだなと。福井県立大学地域経済研究所の元所長である中沢孝夫氏は、福井の強さの理由として「歴史的経緯」をあげられています。その中で、冬が長く、雪が深く、交通が不便であるといった「条件の悪さ」が、福井を育んだのだと説明されています。
後日、大雪について学生と話をしました。毎日下宿の駐車場の雪かきで大変だったという学生がいる一方、祖母や親が雪かきをして、自分は家の中にいたと言う学生も。雪が降っても、道路はブルドーザーで除雪され、会社やお店、家庭でも除雪機が活躍しています。昔と比べて雪が少なくなったとも聞きます。福井の人が家族総出で冬の間ずっと雪かきをしなければならないといった環境はなくなっているのだと気付きました。雪が育む福井の強さは、過去の話となり、いずれ失われるか、少なくとも弱くなるのでしょう。
では、福井の企業はどうすれば良いのでしょうか。雪が育む福井の強さは弱まっているのに、競争は世界を相手にしなくていけません。福井の強さに頼ったままの経営では早晩立ち行かなくなってしまうでしょう。解決策の一つは「投資」です。日本で、世界で戦える競争力を獲得するために投資しつづける必要があります。
私が研究している管理会計学では、投資の収益性を計算する「投資経済計算(資本予算)」が提唱されています。福井県内企業への調査(2011年)によれば、福井企業の多くが、回収期間法という手法を利用していました。回収期間法では投資金額を回収できる期間を計算し、その期間が短い投資ほど有利だと判断します。変化が激しく将来予測が不確実な業界や市場など、投資を早く回収できることを重視する時に有効な計算方法です。回収期間法の計算方法はとても簡単であることも特徴です。ただ、回収期間法は、貨幣の時間価値を考慮しておらず、理論的に問題があるともされています。日本全国の企業を対象とした調査でも、多くの日本企業が回収期間法を利用していますが、同時に正味現在価値法といった貨幣の時間価値を考慮する方法も併用しています。
手法の特性を理解し、複数の計算を行い、多面的に投資を検討するのが望ましいのですが、簡単な方法でこれだけは!と言うなら、割増回収期間法という方法があります。回収期間法が、投資金額を回収できる期間を計算するのに対し、割増回収期間法は、銀行から借りた投資資金と銀行に支払う利息をあわせた金額を回収できる期間を計算するものです。利息を含めた金額の回収期間を計算することで、貨幣の時間価値を考慮しているのとほぼ同じ、理論的な計算となります。加えて、銀行から融資を受ける時は、返済できる投資なのか銀行から審査を受けることになるでしょう。投資の直接的な効果ばかりでなく、第三者の視点、財務的な視点から投資を冷静に評価しなおすことも可能になります。他にも、社内金融などを応用して経営の中で活用するなど、様々な効果を得ることができるでしょう。
会計は税金の計算をするためだけにある訳ではありません。是非、経営に会計を活用し、会社をそして福井をより良くしていただけたらと願っています。人的要因にかかわる安全管理の新しい見方
安全管理の現場というと、つらく不毛な現場であると感じる人は多いのではないだろうか。繰り返される事故の原因は当該メンバーがうっかりしていた、他のことに気を取られていた、ぼーっとしていたためであり、対策は事象の掲示とマニュアルを徹底するよう指導することに尽きる。しかしながら、同じような事故が繰り返されているということは同じような対策も繰り返されているということであり、これ以上何をすればよいのかがわからない。どうすれば事故を減らせる、根絶できるのかと日々頭を抱えている。
これが従来からの安全管理の現場の姿(Safety I)である。所定のマニュアルが定められ、安全かどうかは「マニュアル通りに作業をしているか」と実績(一定期間ごとの事故件数や事故率)で評価される、そして、事故の際にはどこでマニュアルから逸脱したのか、なぜ逸脱が生じたのかが分析される。そして逸脱を生じさせないために、注意書きの赤文字が現場に書き込まれ、監視と教練が強化されるとともに、場合によっては罰則が設けられる。
このような従来からの安全管理の姿に対して、新しい安全管理の姿(Safety II)への移行をすべきだという声が上がってきている。
Safety IIの考え方の特徴は、マニュアルにある手順からの逸脱を「排除すべきもの」ではなく「適応の結果」とみる、という点である。マニュアルは理想的な作業の進め方を描いた「道しるべ」であって、人を縛るものではない。そしてマニュアル通りでない行為(逸脱)については、「望ましくないもの」と決めつけるのではなく、その時にその人にとって最も適応的であった行動とみるのがSafety IIの考え方である。
例えば、「ある作業をしている最中にうっかりミスが起きたが、そのことに気づかないまま作業が進み、事故に至った。調査すると、指差し確認をしていなかった(マニュアルではするようとに書かれていた)ことがわかった」というのはよくある失敗だろう。この時、指差し確認しなかったことを違反として摘発し、指導を徹底するのがSafety Iである。一方、Safety IIではこの例に対して、「本人」にとっては(たとえ違反であったとしても)「指差し確認をしない」ということが「適応的」だったからこそ、指差し確認をしなかったのだと考える。そして、例えば、これまでにも指差し確認をしなかったことが多々あったはずである(それが適応的なのだから)と考え、「なぜこれまで事故が起きなかったのか」へと考えを進めるのがSafety IIである。
それはたまたまの幸運で事故に至らなかったのかもしれない。もしそうであれば、単なる運を必然に変えるにはどうすればよいのかを考える。逆に、きちんとマネジメントされた結果として事故に至っていなかったのであれば、「どのようなマネジメントがなされていたのか」「なぜこれまではマネジメントできていたのか」、あるいは「なぜ事故が起きた時にはマネジメントされなかったのか」を考える。
こうして「事故に至らせない要因・方法」を現場の実践から見つけ出すのがSafety IIである。Safety Iでは「事故が起きた事象」だけしか見ない。一方で、Safety IIでは「事故に至っていない=ノーマルな日常」に着目する。当然ながら事故に至るケースよりも、ノーマルなケースの方が本来数が多い。すなわち、事故だけを調べるより、参照すべきケース数が多く、その分抽出できる教訓は多くなると期待できる。
このような視点に立った安全管理は、航空分野ではLOSA(Line Operation Safety Audit)と呼ばれるプログラムで以前から行われているが、他の分野ではまだあまり浸透していない。「繊維王国・福井」の強みとは
ご存じの通り、福井県はナイロン、ポリエステルなどの合成繊維長繊維織物において、現在でも日本有数の産地である。古代より越前の国では絹織物の生産が盛んであり、江戸時代には藩の財政を支える重要な品目であったとされている。明治期においては、最新鋭の製織技術の導入とともに、輸出向けを中心とした羽二重織物の生産が盛んになった。その後、幾度となく荒波が産地を襲うなかで、主生産品目を人造絹糸(レーヨン)、合成繊維(ナイロン、ポリエステル)と変えながら、日本有数の繊維産地としてしぶとく生き残っている。他産地の例を見ても、このように主生産品目を変えながら、現在でも繊維産業が地域経済を支える力強い存在となり得ているところはあまり見当たらず、非常に希有な存在であるといえる。
日本経済の発展は繊維産業の発展とともにあったといっても過言ではない。現在の日本を支える主力産業のひとつである自動車産業を見ても、日本最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車のルーツは豊田佐吉が発明した自動織機にあり、小型車メーカーのスズキもそのルーツは鈴木道雄の発明した鈴木式織機にある。原糸メーカーの多くは現在、その技術を活かして化学メーカーとして発展してきており、日本の大手商社の多くは繊維取引で拡大してきている。機械メーカーにおいてもルーツが繊維機械にある企業も多く、繊維は日本の経済を支えてきた重要な産業であったといえる。
福井産地の話に戻ると、現在、福井産地は合繊長繊維織物において全国生産量の約4割を占めており、準備(糸加工など)、製織、染色・機能加工などの中間加工業者が産地を形成している。その多くは、原糸メーカーなどの発注元から材料と設計書を受け取り、加工して納入し、加工賃を受け取る「賃加工」という形態が取られていることが多い。かつては勤勉で低廉な労働力を背景にした大量生産が行われていたが、円高・諸外国の台頭により国際競争力が低下し、輸出主体であった福井産地には厳しい状況が続いている。
しかし2000年頃からは、こうした受託加工中心から「製品開発・提案型」ビジネスへの転換が図られてきている。すなわち、受託加工を通じて製品に関する技術やノウハウを身につけた産地企業が、自社で開発した製品を発注元の原糸メーカーに提案していくというものである。これは、単なる下請的生産とは異なる技術的主導性を持つビジネスであり、低コスト生産を武器としている海外の企業には、簡単に模倣ができないものであるといえる。一方、繊維以外の分野へと多角化を進める原糸メーカーにとっては、産地の提案を活用することでより付加価値の高い製品の開発が行えるだけでなく、製品開発の負担を減らし自社の経営資源を新分野へと振り向けることが可能となるわけである。また産地企業のなかには、非衣料分野にも積極的に進出している企業も多く見受けられ、自社で開発した製品を自社で販売する「自販」を通じて、新規市場の開拓が行われている。
また注目すべき点は、国内外の高級ブランドとの取引も多く見られていることである。こうした取引においては、発注元は自社ブランドの差別化のために「市場にない特長ある製品」を求めており、大手企業では大ロットでないと対応が難しいことから、高い技術を持ち、発注元の要望に柔軟に対応できる小規模企業と取引を行う傾向にあるとされる。すなわち、技術力が高く小規模企業が多い福井産地は、こうしたブランド企業との取引に適した産地であるといえよう。付け加えていえば、新製品に関する情報が漏れないよう、あえて地方都市の繊維企業との取引を行うブランド企業もあるとのことであった。
先述したように、かつて福井産地は生き残りを模索して生産品目を変えながら、粘り強く発展を続けてきた。そこには、企業だけでなく、大学、行政、そして公設試験場が密接に結びつき、まさに「繊維版シリコンバレー」のような様相を呈していた。ここで培われた技術を継承するとともに、機械、化学などの分野でも多くの技術蓄積がある福井という地域の強みを活かし、他分野とも連携しながら、新たな価値の創造へとつなげていくことが望まれる。近年の国際交渉から見る「貿易と環境」について
1.環境物品の貿易自由化を巡る国際交渉から
2011年11月APECにおいて、2015年末までに対象となる環境物品の実行関税率を5%以下に削減することが合意された。そして、2012年9月、関税番号6ケタの分類ではあるものの、環境物品54品目が定められた。また、2014年7月には、日本だけでなく、米国、EU、中国などを含むWTOの有志国14か国・地域の間で環境物品交渉が立ち上げられている。
APECで合意されたリストに沿って日本の環境物品貿易を確認すると、54品目が定められる前の2011年には339億2718万9千ドルの貿易黒字であったのに対して、関税削減の目標期間が終了した後の2016年には190億2438万9千ドルの貿易黒字となっている。つまり、依然として環境物品の貿易は日本の強みの一つであるものの、貿易黒字は縮小していることが分かる。
日本にとって貿易額(輸出入額の合計)が大きい環境物品は、上から順に、太陽光パネル、セル(HS:854140)、選別破砕機関連機器(HS:847989)、太陽光反射鏡(HS:901380)であるが、2011、2016年共に大幅な貿易黒字となっている品目は、上記の選別破砕機関連機器、太陽光反射鏡に加え、蒸気タービンの部分品(HS:840690)などである。また、発電関連機器(太陽光、バイオマス、潮力等)(HS:850239)も2016年については大幅な貿易黒字となっている。
一方、2011年の段階で既に貿易赤字となっていた品目は竹製品(床パネル)(HS:441872)、風力発電機(HS:850231)などの6品目である。また、2016年については最も貿易額の大きかった太陽光パネル、セルに加えて、大型発電用ガスタービン(5000Kw超)(HS:841182)、液体のろ過機(排水処理)(HS:842121)などの6品目も貿易赤字に転じている。これらの6品目では中国、韓国、台湾向けを中心に輸出額の減少が見られた。
日本の環境物品の貿易黒字は、対APECで見ると世界全体よりも多少大きい傾向にある。そのため、この分野の貿易に関しては、EUを始めとするヨーロッパ諸国との貿易動向を含めて、今後も強みを発揮していけるかどうかを見ていく必要があるだろう。2.地球温暖化を巡る国際交渉から
2018年12月15日(日本時間16日)に2020年以降の地球温暖化対策の在り方を定めた「パリ協定」の実施ルールが採択された。今後は、先進国から発展途上国への資金援助や技術支援を活用しつつ、共通のルールの下で温室効果ガスの排出削減に取り組むことになる。
貿易自由化が温室効果ガスなどの排出に与える影響は、(1)排出係数の変化が排出量に与える効果(技術効果)、(2)貿易自由化前と生産規模(実質GDP)の水準が同じであったとしても、各財の生産構成の比率が変化することによって排出量が変化する効果(構成比効果)、(3)実質GDPを変化させるような生産量の変化が排出量に与える効果(規模効果)の3つに分類される。
WTOによると2016年の世界の貿易額(輸出入額の合計)は32兆3309億1200万ドルとなっており、1948年のGATT発足当時と比べると、200倍以上増加している。日本は省エネ技術に強みを持つとされるが、温室効果ガスを削減・抑制するためには、技術効果が規模効果や構成比効果による排出増を上回っていけるかどうかが一つの鍵となる。
また、貿易の増加に伴う国際輸送からの温室効果ガスの排出についても対策が必要である。例えば、2014年の国際海事機関(IMO)の調査によると、2012年の国際海運輸送からのCO2排出量は7億9600万トンとなっており、同年の日本1国分の排出量の約64%に達する。
しかしながら、国際輸送に伴う排出規制は、(ⅰ)公海、領空外などの関係で国や地域の特定が困難なこと、(ⅱ)海運の場合、 船籍、船主、海運事業者、荷主、寄港地など様々な主体が存在すること、(ⅲ)空路の場合、必ずしも最短コースを移動しないという距離の計測の問題などがあり、IMOと国際民間航空機関(ICAO)それぞれの対応や、輸送を担う企業の自主的な排出削減努力に委ねられているというのが現状である。国際輸送からの温室効果ガスの排出についても、国際的な制度設計が求められている。今後も、貿易からの利益を享受しつつ環境をも保護する、相互支持的な道を探求していきたい。
<参考文献、データ等>
・温室効果ガスに関するデータ「国立環境研究所, 日本の温室効果ガス排出量」
・環境物品に関するデータ「International Trade Centre, Trade Statistics」
・世界の貿易額に関するデータ「WTO Statistics on merchandise trade」
・IMO, Third IMO Greenhouse Gas Study, 2014.
・環境省、「国連気候変動枠組条約第24 回締約国会議(COP24) (概要と評価)」、2018年12月15日。
・経済産業省、「2016年版不公正貿易報告書」、2016年6月。
・吾郷伊都子、「環境物品自由化で輸出拡大へ」、ジェトロセンサー、2013年4月号。
・寳多康弘、「国際輸送部門における環境政策に関する経済分析」、RIETI Discussion Paper Series 13-J-061、2013年9月。国際ビジネスの倫理的課題からみたTPPの意義 ~倫理問題への対応が迫られる日系企業と「無知のベール」の効用について~
米国を除いた11カ国による環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が12月30日に発効する。TPPは経済厚生にとってプラスに働く「貿易創出効果」が期待できる反面、必ずしもパレート改善とはならないことから、日本国内では専ら影響の大きい農業問題に関心が集まっている感がある。一方、企業のグローバル経営戦略を研究している立場から注目しているのは「労働章(第19条)」 が組み込まれたことである。特に、労働に関する規定が入ったFTAの発効はベトナムにとっては初めて。マレーシアにとっても豪州およびニュージーランド以外とのFTAでは初めてのことである。なぜ、これが注目されるかといえば、これまで、企業倫理の普遍的な諸規範について、概念としては存在するものの、国による違いなどから、現実には「国際ビジネスを規制するのは不可能ではないか」と考えられてきたからである。TPPはこの長年の課題に対する突破口となる可能性を秘めている。
背景には、グローバル化によって企業の倫理的な問題が国境を越えて広がっていることがある。これに対し、1996年にシンガポールで開催されたWTOの第一回閣僚会合で労働基準を取り扱う権限を有する機関はILOであることを認める宣言が採択されたことは、この分野における行き詰まりを打開する重要な一歩となった。これを受けてILOは1998年、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」を採択した。これがTPP労働章のベースとなっている。
こうした中、マレーシアやベトナムに進出している日系企業は待ったなしの対応を迫られている。なぜなら、マレーシアには現在、不法就労を含めると同国労働人口の2~3割に当たる300万~400万人の外国人労働者が存在するが、中には「強制労働」に当たる雇用慣行も見られるからである。米労働省によれば、同国での強制労働は、特に、電子工業や縫製業に多く、パーム油産業においては児童労働も散見される。ベトナムでも、結社の自由の制限のほか、特に、縫製業を中心に低賃金や児童労働、さらには人身売買に関する問題点などが報告されている。日系企業は下請けや海外の取引先まで含めた雇用の実態を早急に把握する必要に迫られている。TPPではたとえメンバー国でなくとも、強制労働を容認している企業や国からの輸入を控えるべきとしているからだ。
TPP協定の大きな特徴として、労働章の規定と解釈又は適用に関して、TPP参加国間で生じる問題も「紛争解決章(第28条)」の適用対象となることが挙げられる。これは、ISDS(投資家対国家の紛争)ではなく、国家間の紛争解決手続きであるが、違反した場合はTPPで認められている利益の停止という、一種の経済制裁を発動できる仕組みを規定していることから、国際的な労働基準に達していないメンバー国の法律改正や監視体制の強化が進むことは必至といえよう。
日本においては、こうした企業の負担を軽減する枠組みの策定が急務である。たとえば、2016年末に策定された日本政府のSDGs実施方針には「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」の策定が明記されたが、人権デューディリジェンスを促進するような政策など、この分野における企業のリスクや負担を軽減できるような政策の早期構築が求められる。
企業においては、SA8000やISO26000など関連する国際規格を取得するのも有効だが、伝統的な業績基準に加えて倫理面にも配慮した社員の採用と昇進、倫理的な企業文化の醸成や意思決定プロセスの導入、倫理責任者の任命、さらには、倫理に反する儲け話などに手を出さないといった精神的勇気を奨励する環境づくり、などへの対応を急ぐ必要があるだろう。
最後に、話は少し逸れるが、国際ビジネスにおいては適切な行動方針が定かでない倫理的ジレンマに直面することがよくある。たとえば、企業幹部が貧困国に出張した際、子会社が社内倫理規定に反して幼い少女(児童労働者)を工員として雇っていることに気づいたとする。彼はすぐに少女を成人と交代させようとするが、事情を聞くと、少女は孤児で、6歳の弟と二人暮らしの彼女にとって別の仕事を見つけるのは困難であり、もしも解雇されれば、弟のためにエイズの危険がある売春を始める恐れすらある。そんなとき、どうすればよいのだろうか。このような倫理的ジレンマから抜け出し、容認できるような解決策に導いてくれるような道徳的指針や倫理的解決手段が本当は必要なのである。ここでは、ジョン・ロールズという哲学者が考案した概念上の道具である「無知のベール」を利用する方法を紹介したい。「無知のベール」を被ることで、平等な原初状態で原則を選ぶことが可能となる。つまり、偏見なく自由に状況を考察することができ、それによって正義の原理を見出すことができるというのである。ロールズは全員が賛成する正義の基本原理は2つあると言っている。第1の原理は、他者にも同じ自由が与えられる範囲で、一人ひとりに最大の基本的自由を認めると言うもの。興味深いのは第2の原理である。それは、まず公平な基本的自由を確保し、そのうえで不公平が全員にメリットをもたらす場合にのみ、基本的な社会財(所得や富の分配、機会など)の不公平が認められるというものである、つまり、もっとも恵まれない人の境遇を改善するような不公平ならば、正当化されるとしたのである。こうした「格差原理」には反論もあるものの、ロールズの無知のベールは、難しい倫理的ジレンマを切り抜けるために利用できる、有効な概念的ツールといえる。
「デジタル化への移行と人材教育」
近年、ビッグデータおよびデータ解析、クラウドコンピューティング、ソーシャル・ネットワーキング・サービス、インターネット接続機器、IoT(モノのインターネット)、人工知能と機械学習等といったデジタル技術の発達が目覚ましい。デジタル技術の社会への導入、いわゆるデジタル化の影響については、世界中で活発に議論されている。日本では、デジタル化が日本企業の優位性の喪失や雇用減少につながると危惧する向きが少なくない。それでは、東南アジアでどのように認識され、どのような対策が講じられてきたのであろうか。
東南アジア各国の対応を簡潔に言えば、(1)デジタル・インフラ整備、(2)関連する法制度の整備、(3)デジタル化に対応できる労働力の育成の3点に集約される。タイはASEAN(東南アジア諸国連合)のインターネット接続の向上に向けた「情報通信技術基本計画」をまとめ、農村部の住民が発展から取り残されぬよう、デジタル時代に使える能力の開発を志向している。本年の8月29日には第50回ASEAN経済相会合が開催され、データ保護、デジタル人材の育成、起業家育成等の6つの優先取り組み分野を18カ月後までに行うことで合意した。
一方、企業は、業務・作業の効率向上のためのツールとして、デジタル技術の利用に大きな期待を寄せており、実際に活用を進めている。大手通信事業者のテレコム・マレーシアは、マレーシアの新興企業Tenderinが開発したオンラインのB to BプラットフォームであるLapasarを利用して、調達・支払い・配達といった一連のプロセスにかかる時間を80%短縮し、コスト削減を実現した。今後キャッシュレス化が進展すれば、取引コストの削減、利便性の向上、企業の管理強化、ソーシャルメディアを通じた従業員の採用と定着のための支援、従業員の顧客への接し方についての最新情報の獲得、といった恩恵を得られる見込みである。
さて、デジタル化への移行なりデジタル技術の採用によるメリット獲得を目指す上で障害になりそうなのが学校教育である。マレーシアでは教育現場でデジタル化が進められてきたものの、従来は日本と同様に、メールシステムの導入や、授業を記録し再生できるようにしたり、遠隔地の学生と内容を共有したりといったことが可能になるインタラクティブ・ホワイトボードの活用といった、デジタルツールの活用による教務の効率化や教育方法の変革にとどまっていた。
ところが今年に入り、東南アジアではデジタル化に対応した教育内容を提供する動きが見られるようになった。具体的には、デジタルスキルに長けた人材の育成を謳う民間の学校が設立されてきている。今年7月、AlibabaビジネススクールはGET(グローバル電子商取引人材)ネットワークの設立を発表した。GETネットワークには18の公立・私立大学に加え、マレーシア教育省やマレーシア・デジタルエコノミー公社も関与している。GETネットワークは若年者が電子商取引に熟達した人材となり、中小企業による輸出の活性化を可能にすると謳っている。すでに65の教育機関と提携し、260人以上の講師を育成し、約1,600もの中小企業と約7,000人の受講者に講義を行っている。受講者の出身国は豪州、中国、インド、イスラエル、モンゴル、シンガポール、韓国、トルコとさまざまであるが、最も需要があるのはマレーシアとタイである。
また、NTTデータの傘下にあるマレーシアの電子決済代行会社iPay88は、デジタル化と電子商取引の手法を教育するアカデミーを立ち上げた。今年9月から授業を開始し、来年9月までには600人の学生を対象に4つのコースを開講すると発表している。
日本ではデジタル化への移行が急速に進展しており、手頃な価格で高速のインターネットを利用できるよう、インフラ基盤の整備・強化に努めてきた。識字や算数といった基礎的なコンピュータの利用に必要なスキルは世界でも最高水準にあり、デジタル決済サービスの利用率向上に向けた取り組みも進められてきている。しかし、教育内容の改革はほぼ手付かずと言ってよいであろう。
今後はコーディング、データ分析といった高度なスキル、コラボレーション、コミュニケーションといったソフトスキルへのニーズが高まっていくと思われるが、これらのスキルの内容は日々、変化していくものである。そのため、一定期間集中して勉学に励み学位を取得するのではなく、求められるスキルの内容が更新されるたびに民間企業による定期的な講義を受講するという生涯学習が理に適っている。これまでの制度、仕組みでは対応できないデジタル化という現代的課題に対して大学は何をすればよいのか、日本でも広く議論するときではないだろうか。※本稿の執筆にあたっては、The Star 2018年7月30日記事「Furthering digital economy through education」、日本貿易振興機構ビジネス短信2018年9月3日記事「ASEAN経済相会合、デジタル関連の取り組みで進捗」、日本経済新聞2018年9月6日記事「デジタル経済、各国協調」、New Straits Times 2018年10月5日記事「TM, Tenderin collaborate to digitalise procurement process」を参考にした。