福井県の在宅医療・介護と地域包括ケアシステム
わが国は、住み慣れた地域で自分らしい生活を維持・継続するために地域包括ケアシステムを推進している。福井県でも、在宅医療・介護を必要とする住民が安心して地域で療養生活を継続することができるよう、地域包括ケアシステムにおける在宅医療・介護連携をシステム化している。本コラムでは、「在宅医療・介護連携に関する市民アンケート調査」(大久保清子、2019年11月)結果の一部を紹介し、自宅で楽しく豊かな療養生活を送るために必要なポイントをお伝えしたい。
本調査は、2019年11月時点で福井県内に居住する市民約2,400名で、居住地や性別、年代(20~80歳代)を無作為に抽出した。回収1964部、回収率は82%である。男性22.4%、女性77.2%、不明0.4%で、40歳代が21.3%と最も多く、次が30歳代、50歳代の20.3%である。家族構成は、2世代世帯(子ども)33.7%、3世代世帯21.9%、夫婦のみ世帯15.6%、2世代世帯(親)13.6%、単身世帯12.1%であった。
回答者が感じている「自宅で療養するときの不安」は、「精神的な負担」が79.0%と最も多く、次に「経済的な負担」70.8%、「仕事と介護の両立」48.9%であった。医療や介護に関する身近な相談相手で最も多いのが「家族」88.8%で、次に「友人・知人」40.1%であった。在宅医療を実現できない・希望しない理由で最も多かったのは、「介護する家族に負担がかかる」83.3%であった。しかし、人生の最期を迎えたい場所は「自宅」が48.4%と最も多く、次が「ホスピスなどの緩和ケア施設」23.0%であった。在宅医療の認知度で見ると、在宅医療を良く知っている人の方が自宅で最期を迎えたいと考える割合が高く、余命で大事にしたいことは、「家族や友人のそばにいること」71.2%、「家族の負担にならないこと」67.0%、「痛みや苦しみがないこと」61・0%であった。
この結果をみると、県民は家族や友人をとても大事にしており、最期まで家族や友人とかかわりながら自宅で療養生活を送りたいと思っているようである。しかし、家族に負担をかけない、痛みや苦しみを軽減するため施設に入所しようと考えていると思われる。在宅医療は、訪問看護や介護などの多職種や近隣住民とも連携し、その人・その家族らしい療養生活を支えていくものである。在宅医療を良く知っている人が自宅で最期を迎えたいと考える割合が高いのは、それができることを知っているからであろう。自宅で医療や看護・介護を必要とする方は、自分一人ですべてを抱え込むのではなく、日常的なケアは在宅医療や看護・介護の専門職に任せ、家族や友人が楽しく過ごすための豊かな時間と空間をつくってみてはどうだろう。その実現に向け、近隣の訪問診療や訪問看護・介護事業所、地域包括支援センター等に相談し、福井県の多職種連携システムを活用して欲しい。