あなたの会社は健康ですか?~倒産指数/企業力指数~
東京商工リサーチによると、2019年の1月から11月にかけて、福井では42件の倒産が発生し、負債総額は約373億円でした。2018年の1年間では、39件倒産し、負債総額は約35億円でした。今年は12月前に昨年の倒産件数を超えています。負債総額が昨年の10倍以上なのは、2月と5月に100億円超の倒産が発生したためです。倒産の原因は「販売不振」が多く、「他社倒産の余波」や「既往のシワ寄せ」、「運転資金の欠乏」などです。
会社が倒産しないためにはどうすれば良いのでしょうか。会社を人の体に例えて単純に考えれば、大切なのは「健康」です。定期的に健康診断や検査を受け、自分の体の状態を知ることができれば、様々な対策を取ることができます。会社でお金は「血」に例えられますが、血液検査によって様々なことがわかります。有名な検査項目であるγ-GTPは、値が高ければ肝臓に問題があることがわかるので、お酒を控えるなどの対策が取れるでしょう。もし基準値を大幅に超えていれば、精密検査や治療を受けることもできます。この血液検査にあたるものが、会社では会計です。会計によって作られる数値を調べれば、会社は健康なのか、問題がどのあたりにあるのかなどを判断できます。
検査結果の数値が基準値を超えているかを見比べる程度なら、素人にもできます。必要な検査を行ない、様々な項目の数値を分析し、健康なのか、経過観察が必要なのか、緊急入院の必要があるのかなどを判断するには、専門家である医師の判断を仰ぐ必要があります。会計も同様で、会計数値を理解・分析し、総合的に判断するには、専門知識と経験が必要になります。
本来であれば、社長から現場の社員まで、全員に会計教育を行うのが良いのですが、会計教育を十分に行うのは時間もコストもかかります。そんな現実をふまえ、一定の精度で簡単に会社の健康状態(経営状態)を判定する方法はないか、と開発された指標が「倒産指数/企業力指数※」です。この指標は、ある程度の信頼性を有しながら、入手しやすい会計数値による、簡単な計算式で求めることができます。また絶対的な判定基準を持ち、総合的な判断が可能です。
※企業力指数は、倒産指数をもとに一部修正した指数になります。
(1)倒産指数の計算式(一般式)
倒産指数は、5つの指数(収益力指数、支払能力指数、活力指数、持久力指数、成長力指数)の平均で求められます。倒産指数により会社全体の経営状態を判定し、5つの指数により、5つの能力から判定することが可能になります。
倒産指数=(収益力+支払能力+活力+持久力+成長力)÷5={売上高÷(営業費用+支払利息)}+流動資産÷負債※+売上高÷総資本+自己資本÷負債+自己資本÷(自己資本-当期純利益)}÷5
※大企業の場合「支払能力=流動資産÷流動負債」(特別式)
(2)判断基準
基本となる判断基準は「1.0」です。1.0を超えていれば問題なしと考えて良いでしょう。倒産指数はもちろん、収益力指数など5つの指数の判断基準も同じです。指数が1.2以上の場合は「健康」な状態です。0.8~1.2の場合は「普通」か「順調」な状態です。油断せずに監視します。0.6~0.8の場合、「危険」か「不調」な状態です。細心の注意をもって対応する必要があります。0.6以下の場合は「危篤」状態です。機敏な対応が必要になります。
※例外として債務超過の場合、成長力が異常な数値になります。
(3)活用方法
まずは、自社の決算書を用意して計算してください。自社の経営状態を一目で判断できると思います。5つの指標もあわせて数年分計算すれば、自社の経営状態の良好な点や問題点、傾向がわかります。問題の所在・傾向がわかれば、問題を改善し、良好な状態に向うように、経営戦略・計画の策定、業務改善の実施などに役立てることができます。
古来より、彼を知り己を知れば百戦殆からずと言います。己を知り、弱みを強みに変える第一歩を踏み出すために、ぜひ会計を活用してください。
□詳しくは下記の参考文献をご覧ください。
・現代会計カンファランス(1997)『倒産指数-危ない会社ズバリ判別法』日本経済新聞社
・松本敏史・富田知嗣(1999)『あなたの会社の偏差値診断-資料:全上場2211社企業力ランキング』税務経理協会
・松村勝弘・松本敏史・他(2015)『新訂版 財務諸表分析入門』ビーケイシー