産業立地政策を考える――どのような産業分野をターゲットにするべきか
大阪府の産業立地政策(企業立地施策)では、2026年度からターゲットとする産業分野を拡充した。本コラムの執筆者は、この政策変更を検討した大阪府の審議会(大阪府企業立地等投資促進審議会、2025年度)の会長を担当していたので、そこでの議論を紹介したい。今後の福井県の産業立地政策を考える際の示唆になれば幸いである。
大阪府の産業立地政策としては、成長産業のさらなる集積に向けた「成長特区税制」や、中小企業の集積に向けた「産業集積促進税制」および「府内投資促進補助金」などがある。これらの政策は、企業立地優遇制度を通じた産業集積促進が、持続可能な成長を続けるための重要な要素の一つとの考え方にもとづいている。
以下では、大阪府の産業立地政策「成長特区税制」を特に取り上げるが、「成長特区税制」では、これまで「新エネルギー分野」と「ライフサイエンス分野」を大阪の成長産業と見なし、支援対象分野としてきた。ただし、近年、AI技術や半導体などの分野で、新たなイノベーションが生み出される可能性が大いに期待されてきたものの、現行制度ではこうした新たな成長分野への投資を支援できないという課題が強く認識された。そのため、今回の政策変更を検討することになったわけである。
検討の結果、 大阪府の産業立地政策「成長特区税制」における支援対象分野は、表1に示されるように、拡充することになった。
「ライフサイエンス分野」は、引き続き支援を継続するとともに、「新エネルギー分野」は、環境エネルギー関連技術も含めて「カーボンニュートラル分野」と名称変更した。
最も大きな変更は、「イノベーションの創出に資する先端的な基盤技術分野」を追加したことである。

「イノベーションの創出に資する先端的な基盤技術分野」は、国の「統合イノベーション戦略2025」で述べられている重要分野(特に基盤技術分野)を踏まえながら考案したものであり、「カーボンニュートラル分野」や「ライフサイエンス分野」ではカバーできない、AI技術、量子技術、産業用電子機器(半導体・先端電子部品・センサ)を含んだ分野である。また、これらは、宇宙分野やロボット産業など、今後の広がりが期待できる様々な産業の基盤となる分野であると考えられる。
以上は大阪府の産業立地政策についての話であったが、福井県など他の地域においても、企業立地優遇制度を通じた産業集積促進が、持続可能な成長を続けるための重要な要素の一つであるだろう。また、これからの福井県の産業立地政策に関する議論でも、ターゲットとする産業分野(支援対象分野)をどう設定するかといった視点が重要だと思う。
地域の特性に合わせて支援対象分野を限定することは、効果的な産業集積促進のために有用である一方で、新たなイノベーションの可能性は様々な産業分野で期待されるため、これらへの支援を取りこぼすのは避けたい。大阪府の産業立地政策における支援対象分野「イノベーションの創出に資する先端的な基盤技術分野」は、以上の点を考慮した苦肉の策とも言えるかもしれない。