福井県立大学地域経済研究所

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2023年の経済見通しと、求められる企業経営

地域経済研究所 所長・特任教授 南保 勝

 2022年の日本経済を概観すると、コロナと物価上昇に翻弄される消費マインドに呼応して実質 GDP が一進一退の推移となり、停滞感を引きずる状況が続く一年となった。特に、年央にはコロナ感染が世界トップクラスに拡大、行動制限には至らないまでも自発的な外出抑制が個人消費を下押ししたことにより、今一つ精彩を欠く展開が続いた。
 一方、設備投資は増加傾向を維持し景気の下支え役となり、輸出も秋頃までは堅調な需要拡大を続けた欧米向けを中心に増加、年末にかけて個人消費もウイズコロナへの移行により感染再拡大の中でも持ち直したため、景気はかろうじて回復傾向を維持することができた。
 ただ、年末近くには欧米の景気減速や中国のコロナを巡る混乱により輸出が減少に転じるなど海外景気悪化の影響が波及、物価が一段と上昇し個人消費への逆風が強まる中で、12月8日に公表された2022年7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.2%減、年率0.8%減となり、11月に公表された速報値(前期比0.3%減、年率1.2%減)からは上方修正となったものの、その勢いは弱いままの推移となっている。
 こうした中、2023 年は物価上昇と海外景気悪化という強い逆風に加え、国内のコロナ感染再拡大、さらには突如政策変更を決めた日銀の実質利上げなどから、先の見えない状況を強いられるであろう。こうした事態を克服するには、まずは物価上昇に見合う賃金アップが必要不可欠との声もあるが、日本企業の大宗を占める中小企業にとっては従業員が満足いく賃金アップは至難の技であり、今の景況打開策としては、やはり企業経営の本質を改善することが先となろう。
 では、こうした中で企業経営はどうあるべきか。仮に、景気が持ち直すといっても、それに連動して全ての企業で経営環境が改善されるわけではない。ましてや、低い成長率が予想される中では、業界の構造的問題や企業規模、業態、そして企業のマネジメントの違いによる格差を伴い、負け組と勝ち組がこれまで以上に鮮明となることも考えられる。
 そこで、自社が勝ち組に入るためには一体何を成すべきか。それは言うまでもなく、企業トップの経営姿勢が時流を先取りしながら進化し続けることができるかということ。そうしたトップを理解し高いモチベーションを維持する社員の存在があるか否かということになろう。具体的には、今の企業トップが創業者であれ後継者であれ、ましてや性、学歴、年齢に左右されることなく、時代を先取りしたビジネスモデルを如何に構築し続けることができるかどうか。そのビジネスモデルを共有した社員の存在。いわば一丸経営、全体経営とでもいうべき経営スタイルを維持しながら、マネジメントを維持し続けることができるかどうか。そのために、まずは各々の企業が原点に立ち返り、自社の技術・ノウハウ、製品、社員の質、流通、情報網など経営資源の再点検を図り、たゆまぬイノベーションへの挑戦を図ることが求められよう。
 市場の高度化、複雑化、多様化が進む時代だからこそ、そこに多くを占める中小企業の可能性が無限に広がり、中小企業が大いに活躍できるチャンスがあるのだから。