福井県立大学地域経済研究所

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地域の生活インフラの役割を果たすチェーンストア

福井県立大学 地域経済研究所兼担教員、地域政策学部地域イノベーション学科・准教授 勝又悠太朗 

 「令和7年国勢調査」の人口速報集計結果が公表された。これによると、日本の人口は1億2,305万人であり、前回調査の2020年からは309万人の減少となった。2020~2025年の5年間で福井県全体の4倍以上の人口が減少したことになる。また、減少のペースも拡大しており、人口減少がさらに深刻化している状況が浮き彫りとなった。都道府県別にみても、2020~2025年で人口が増加したのは東京都と沖縄県のみであり、2015~2020年に人口増加がみられた埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、福岡県も人口減少に転じた。

 一方、福井県に目を向けると、2025年の人口は729,386人であった。2020年の人口766,863人から37,000人を超える減少を経験しており、減少数も2015~2020年の-19,877人と比べると2倍近くに拡大したことがわかる。そして、県内の17市町村全てで人口減少が確認され、高浜町や大野市、南越前町のように人口減少率が10%を超える市町村もみられた。

 このように、福井県に限らず全国の多くの地域が急速な人口減少に直面している。そして、こうした状況の中で様々な地域問題が顕在化してきている。その問題の1つに小売業や生活関連サービスにアクセスすることが困難な人々の増加、いわゆるフードデザート問題や買い物弱者問題があげられる。特に、人口低密度地域においては、人口減少が続く中で店舗の閉店が進んでいき、公共交通の減少や廃止などの問題も相まって問題が深刻化してきている。

 これに対して、人口低密度地域における生活を支える役割を担う店舗もみられる。例えば、私の前任地である北海道でその役割を果たしている企業の1つがセイコーマートである。北海道では、2022年4月時点で全179市町村のうち152市町村が過疎関係市町村に指定されている。セイコーマートは、このうち2026年6月時点で175市町村に出店するなど、他のコンビニチェーンが出店しない地域にも店舗展開しており、地域の生活インフラとしての役割を果たしている。店内には魅力的なプライベートブランド商品が並ぶだけでなく、生鮮食品や日用品も豊富に揃っており、特に近隣にスーパーのない地域にとっては重要な日常の買い物の場となっている。

 そして、福井県にもセイコーマートと似た店舗展開をみせる企業がみられる。それがドラッグストアのゲンキーである。Genky DrugStores株式会社は坂井市に本社を置いており、福井県、石川県、岐阜県、愛知県、滋賀県に500店舗以上展開するドラッグストアチェーンである。2026年6月時点で福井県には92店舗あり、県内17市町村全てに店舗を出店している(ちなみに、福井県内で店舗展開する他のドラッグストアチェーンの出店状況を確認すると、クスリのアオキは15市町村、V・drugは7市町村、スギ薬局は6市町村、コスモスは6市町村、ウエルシアは4市町村で出店がみられる)。特に、県内で最も人口の少ない池田町への出店は、同社が1店舗あたりの商圏人口として定めた人口を下回るにも関わらず出店したという経緯がある。そして何より、私自身も決して買い物環境に恵まれているとはいえない地域に住んでいる中で、近所にある店舗にはいつもお世話になっており、ゲンキーが地域の生活インフラの役割を果たしていることを実感している。

 フードデザート問題や買い物弱者問題を考えるにあたっては、セイコーマートやゲンキーのような店舗展開をする企業の動向は注目すべきものであるといえるだろう。そして、学術研究の立場からも、こうした企業の企業理念や戦略などを踏まえて、店舗の立地展開を分析してみることで新たな知見が得られるかもしれない。