福井県立大学地域経済研究所

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因果関係とAI

江川 誠一

因果応報。自業自得。身から出たさび。

ヒトは物事に原因を求めるのが好きだ。そして結果がうまくいかなかったときはこう考える。
「次は同じ結果にならないように、違う過程を踏もう」

うまくいったときは同じ手順で同じ結果を求めようとする。ヒトはたぶん、生まれ落ちてからこの思考と行動を繰り返している。

結果が出て、時計の針を戻せないのがわかっているにもかかわらず、遡って原因を探る。そして次はこれまでの経験を踏まえ、よく考えながら歩みを進める。結果と過程のどちらが大事という問題ではなく、結果がすべてであり、そのためにも過程が重要だと解釈したい。

ヒトの知的好奇心が結果に原因を求めるのであろうか。その拠り所は、経験値に長けた長老の先を読む力から、科学的知見とそれに基づく論理的思考へと変化してきた。謎の相関が観測されていた事象間に、因果関係が明らかになっていく。科学技術の飛躍的進歩によって、世の中のすべての事象間の関係性が、やがて解明されるのではないかという幻想を抱かせる。

ところが、ヒトが発明したAI(人工知能)がこの流れを一変させようとしている。現在の科学的知見と論理的思考では、”風が吹けば桶屋が儲かる”と同じくらい荒唐無稽に思えるような関係性を、AIが”答え”として導き出しつつある。ヒトが与えた多変量解析等のツールを単純に高速に処理しているわけではないため、ヒトはその答えに至る過程を理解できない。

ところで、AIの興味は相関関係の強さにあり、因果関係の認否はどうでもいい。いや、因果関係をデータで測ることはできないことのほうが多いという表現のほうが正しい。ヒトは、そこに現時点における科学的知見と論理的思考から、勝手に因果関係を認否しているに過ぎないのかもしれない。

私が作成したデータ分析に関する教材には、”相関関係と因果関係(の違い)”を解説した箇所がある。そのページが時代遅れになる日も近いと感じている。