福井県立大学地域経済研究所

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統計で見えてくる福井県のこれから ―2025年国勢調査に寄せて―

福井県立大学 地域経済研究所 教授 青木 和人

 福井に住んで一年が過ぎようとしている。四季の彩り、地元の人々の穏やかな気質、そして生活のしやすさを日々実感する中で、私の関心は、ますます統計から見た福井のすがたに向いている。令和2年(2020年)の国勢調査結果では、福井県の地域性や生活特性が随所に表れていた。そして、令和7年(2025年)10月に予定されている次回の国勢調査が、どのような変化を私たちに示してくれるのか、静かに期待を抱いている。

 このような国勢調査結果などの統計結果を簡単にわかりやすく可視化してくれるツールとして、内閣府・経済産業省が提供するRESAS(地域経済分析システム)がある。RESASの人口マップ機能では、人口構成や年齢別構造、昼夜間人口、自然増減・社会増減などが地図やグラフで視覚的に示され、統計結果の意味を直感的に理解できる。2025年の国勢調査結果も、RESASにて地域を読み解くことができるだろう。

 RESASの人口マップ機能における人口構成分析では、1960年から2050年(推計値)までの人口推移を地図とグラフで確認できる。福井市を例にとれば、令和2年(2020年)までの国勢調査結果を基に、総人口は1995年を境に減少傾向にあり、生産年齢人口が縮小する一方で老年人口が増加している。これが現在、どこまで進行しているのか、2025年の国勢調査がその実態を明らかにしてくれる。

 また、人口ピラミッドで表示される性別・年齢別構成の変化も重要である。2020年の福井市では、30代~60代の働き盛り世代の人口が厚く、比較的バランスの取れた構造である。しかし、2050年になると、65歳以上の高齢層が占める割合がさらに増加し、特に80歳以上の人口が顕著に増えることが推計されている。一方で、0~14歳の年少人口や20~40代の若年・生産年齢人口は大幅に減少し、さらに少子高齢化が進行した構造になることが予測されている。2025年国勢調査結果は、この推計値を変化させるため、今後の福井県のすがたを見極める重要な材料となるだろう。

 さらに、自然増減分析では、出生率と死亡率の差が視覚的に明らかになる。福井県における合計特殊出生率と人口推移(実績値および将来推計)グラフを表示してみると、福井県では、出生率は、1985年以降低下を続け、2005年ごろに底を打ったことが見てとれる。2005年以降は一時的に出生率が回復傾向を示し、2010年から2015年ごろにかけて1.6前後まで回復していたが、2020年以降、また低下している。

 国勢調査は、ただの人口調査ではない。それは、地域の今を記録し、未来を見通す羅針盤である。そして、その羅針盤を使いこなすために、RESASのような可視化ツールが私達にも簡単に活用できるようになった。数字と地図を重ね合わせることで、福井県のこれからの選択肢が、より具体的な形で私たちの前に現れるであろう。2025年、福井は何を得て、何を失い、何に挑もうとしているのか。その全体像をつかむために、2025年国勢調査結果をRESASにより、把握できることを期待している。