福井県立大学地域経済研究所

お知らせ

  • 今年の漢字と2025年の世相

     「今年の漢字」は、「日本漢字能力検定協会」が、その年の世相を表す漢字ひと文字を一般から募集し最も多かった字が選ばれます。京都の清水寺の舞台上で特大の熊野筆によって揮毫(きごう)される一文字はなかなかの迫力です。年明け2025年の2月24日まで、八坂神社からほど近い「漢字ミュージアム」で展示されるようなので、噂のオーバーツーリズムの真偽を確認がてら河原町周辺に訪れてみるのも一考の価値がありそうです。この「漢字」2024年の第1位は、2000年、2012年、2016年、2021年に続き5回目となる「金」でした。オリ・パラの日本人選手や大谷翔平選手などの活躍による“光”の『金(キン)』、政治の裏金問題、闇バイトによる強盗事件、止まらない物価高騰など“影”の『金(かね)』などが高投票の背景にあったようです。1995年から始まったこのイベントですが、オリンピック・イヤーには「金」が選ばれやすいというのは何となく分かりますが、逆になぜ2004年と2008年に「金」が選ばれなかったのか、気になるのは私だけでしょうか。両年に選ばれた漢字は「災」と「変」です。2004年には、台風の多発、新潟中越地震、浅間山の噴火、猛暑による不作と熊の人里への出没、美浜原発の事故、オレオレ詐欺の多様化などなど、オリンピックどころではない事件が多かったようです。2008年は、安倍氏から麻生氏への首相の交代、オバマ氏の大統領選出、リーマンショックと雇用の悪化や物価上昇、地球温暖化問題の深刻化などのインパクトが「金」を上回った、といったところでしょうか。元日の能登半島地震から始まった2024年は、猛暑と物価高騰、岸田氏から石破氏への首相交代、トランプ氏の大統領再選など、2004年08年と同様に大きな時代の節目であったような気もしますが、それでも今年「金」が選ばれたのは、多くの人が出来るだけ社会の明るい面に目を向けたいと思ったからなのか、あるいは「カネ」に不安や不満を感じる人が増えたからなのか。ちなみに、2000年の投票総数は23,323票で1位の得票率5.86%でしたが、今年は221,971票で「金」に投票した人は全体の5.47%でした。私が密かに期待した「選」に投じられたのは6,071票(得票率2.74%で6位)でした。

     さて、2025年は巳年。「巳」という字は胎児の形を表した象形文字で、子宮が胎児を包む様子が由来とされています。また、蛇が冬眠から目覚め地上に這い出すことから、冬に根をはった草木が芽を出し「新しい種子が生まれる」という意味があると言われています。2024年の出生数は70万人を切り60万人台となり、出生率も前年2023年の1.20をさらに下回り過去最低を更新する見通しです。他方で、過去の記録によれば丙午の前年には出生数が増え出生率も上がっていることから、2025年は少子化が緩和した!と話題になるかもしれません。もちろん社会情勢によっては、オリンピック・イヤーでないにもかかわらず「今年の漢字」に「金」が選ばれたりする可能性も否めませんが。

     2025年が実りある年になりますように。

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  • 第6回地域経済研究フォーラム「福井県のウェルビーイング政策の全体像と最新動向」

    近年、人の幸福、健康、福祉などを広範に包含する“ウェルビーイング(Well-being)”という概念・ものさしに対する関心が世界的に高まっています。こうしたなかで、わが国の政策形成においてもウェルビーイングの視点が導入されてきており、人々の幸せ実感に寄り添うウェルビーイング政策が、今後地方自治体の政策展開において重要性を増していくと考えられます。そこで、本地域経済研究フォーラムでは、福井県庁 未来創造部 幸福実感ディレクター ウェルビーイング政策推進チームリーダー 飛田 章宏 氏をお迎えし、福井県のウェルビーイング政策の全体像と最新動向についてお話いただきます。多くの方の参加をお待ちいたしております。
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  • 高速交通による大交流時代に関する地域経済研究フォーラムが開催されました。

     お知らせ

    12月19日(木)の午後、福井駅前のハピリンホールにて、「高速交通による大交流時代と福井・中部の課題―北陸新幹線と中部縦貫道の影響をさぐるー」をテーマに、第5回地域経済研究フォーラムが開催されました。今回は、公益財団法人中部圏社会経済研究所との共催で、会場およびオンラインをあわせて140名の方にご参加いただきました。前半では、中部圏社会経済研究所の宮本文武代表理事から「中部地域が考える<大交流時代>とその課題」について、富山国際大学現代社会学部の大谷友男准教授から「北陸新幹線敦賀開業のインパクト」について、ご講演いただき、私ども地域経済研究所からは「北陸新幹線による企業活動の変化に関するアンケート調査」の分析結果等について報告いたしました。後半のパネルディスカッションでは、山田賢一越前市長、中央日本総合観光機構の寺澤大介常務理事、北陸経済連合会の牧野正広常務理事にご登壇いただき、宮本代表理事、大谷准教授を交えて、高速交通体系の整備下での産業立地や観光、駅前開発などの取組をご紹介いただくとともに、「大交流時代」に向けた福井と中部の課題について、議論いたしました。

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  • ■中島精也先生による時事経済情報No.112

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  • ■吉田陽介先生による中国現地ルポNo.20 消費を活性化させよ 中央経済工作会議の狙いとは?

    店にどんどん人が!

    中国の消費は本当に悪いか?

    12月某日、年末に家族で食事するレストランの下見をするため、仕事帰りに家の近くにあるショッピングセンターに立ち寄ってみた。ショッピングセンターに入ろうとした時、後ろから仕事帰りの会社員や学校帰りの中高生らがどんどん入っていった。

    筆者が店を訪れたのは午後6時過ぎ。夕食どきのためか、飲食店にも人が入っていた。7時近くになれば、人気店は席が埋まり、順番待ちの客は店の前に置かれた椅子にかけてスマホを見ながら待っている。

    こういう1コマを見ると、中国の個人消費は本当に悪いのかと思ってしまう。だが、店内を歩く人をよく見ると、袋を下げている人がさほど多くない。ウィンドーショッピングを楽しむ人も一定数いるのではないかと思う。そのため、店内の人の多さだけでは、中国の消費が好調だとは結論することはできない。

    ただ、ウィンドーショッピングをして帰宅後にネットで購入するという人もいる。ネット店舗は実店舗に比べて2割ほど安い場合があり、100元(1元=約21円)買ったら50元バックというキャッシュバックのサービスがあるからだ。これは中国の消費者の「節約志向」を示している。

    消費活性化の環境整備狙う

    中国政府

    今の中国政府は、地方政府の債務、投資による景気回復の持続可能性などの問題もあり、固定資産投資で経済発展をけん引する策をとるのに慎重だ。今後の中国経済の回復は個人消費の伸びが重要なファクターになるだろう。

    12月10〜12日に、来年の経済政策の方針を決める中央経済工作会議が開かれた。日本メディアが報じたように、緩和気味の金融政策をとるとされた。この会議では、金融政策の基調のほかに、消費の活性化につながる措置も提起された。12日に公表された会議の報道文には以下のような措置が挙げられている。

    1、消費喚起特別行動を実施し、中低所得層の増収と負担軽減を図り、消費の能力、意思、レベルを高める。

    2、退職者の基本年金を適度に引き上げ、都市・農村住民の基礎年金を引き上げ、都市・農村住民の医療保障財政補助基準を引き上げる。

    3、範囲を拡大して「両新(設備更新と消費財の買い替え・下取り)」政策を実施し、多様な消費シナリオをつくりだし、サービス消費を拡大し、文化・観光業の発展を促進する。

    4、新しいものを打ち出す「首発」経済(企業による新製品発表、新業態・新モデル・新サービス・新技術の打ち出し、第1号店オープンなどの経済活動を総称したもの)や氷雪経済、シルバー経済を積極的に発展させる。

    5、トップダウンの組織調整に力を入れ、より大きな力で「両新」プロジェクトを支える。

    6、中央予算内投資を適度に増やす。財政と金融の連携を強め、政府の投資で社会の投資を効果的に引き出す。

    7、第15次5カ年計画の重大プロジェクトを早期に計画する。

    8、都市更新の実施に力を入れる。

    9、社会全体の物流コストを下げる特別行動を実施する。

    以上の措置を見ると、「全面的」という言葉で表現できる。報道文では、新たな消費の分野の活性化、3月の全人代で打ち出された「買い替え・下取り」政策の実施だけでなく、氷雪経済、シルバー経済の発展にも言及されている。

    さらに、財政政策と金融政策などの「ポリシーミックス」で、民間投資の「呼び水」とすることも述べている。ここで、都市更新にも言及しているが、既成市街地の再開発は関連の需要を生み出す。中国のある証券会社の分析レポートによると、城中村(都市の中で発展から取り残された地域)の再開発が分譲住宅需要を生み、不動産投資が回復し、ひいては、景気回復につながると見ている。

    「弱者」にも配慮?

    全面的な景気対策

    また、所得増加については、昨年は「中間層の拡大」が強調されていたが、今年は低所得者への配慮、定年退職者の「養老金(年金)」の引き上げについても言及されており、弱者への手当てを行うことで、全体的な消費活性化につなげようとしている。

    昨年の中央経済工作会議は、「デジタル消費、グリーン消費、健康消費を積極的に発展させる」とし、「インテリジェント家庭用品、文化・娯楽・観光、スポーツイベント、「国貨潮品(国産ブランドのトレンド商品)」などが「新たな消費成長ポイント」とされ、さらに、「新エネルギー自動車、電子製品など大口消費を増やす」と述べていた。

    氷雪経済、シルバー経済は新しい概念ではなく、中国の経済メディアや政策文書にも登場している。例えば、2019年度の「計画報告」は、「東北地区の寒冷地における「氷雪経済」の発展促進に関する指導意見の策定を検討」することを盛り込んでいた。氷雪経済は雪資源の開発やウィンタ―スポーツ、文化、教育、観光などの関連産業のことをさすが、これは比較的遅れているとされている中国の東北地方の経済活性化を図ったものでもある。

    シルバー経済は60歳以上の高齢者を対象にした旅行や高齢者ケア、健康サービスなどの消費をいう。11月8日の新華社の報道によると、2023年末時点で、中国の60歳以上の高齢者人口は2.97万人に達し、総人口に占める割合は21.1%に達し、「人口の高齢化が中国の基本的国情」だとしている。そのため、介護を含む「養老(高齢者ケア)」サービスはハード面・ソフト面での充実が必要で、関連産業は今後伸びる可能性のある産業だ。

    また、中国の高齢者は元気だ。今後は段階的に延長される方向だが、現在の定年年齢は男性が60歳、女性が55歳で、体が十分動く歳だ。中国では、孫の面倒は定年退職した親の“仕事”となり、孫にカネを使うことも多い。筆者の家もそうだが、祖父母は孫のためにおやつや栄養のある食べ物、時には孫の欲しいものも買い与える。こうした祖父母の消費も消費活性化に一定の役割を果たすと考えられる。

    一方で、孫の面倒を見ない高齢者には、旅行に行く人もいる。業者もそうした高齢者のニーズに注目しており、高齢者向けの旅行商品もあるそうだ。

    このことから、高齢者は潜在的消費能力がある。シルバー経済は今後、中国の消費活性化で重要な役割を果たすと考えられる。

    「アベノミクス」と同じか?

    中央経済工作会議の目的

    この中央経済工作会議の狙いは、中国経済の「先行きが暗くない」ことを示すことだ。ここ2年の会議の基調は、「中国経済光明論」を強調したものになっている。今年、中国政府は力強い経済対策を何度も行ったが、それは中国の人々の中国経済の先行きに対する不安を和らげるためでもある。

    日本も安倍政権下で推し進められた経済政策「アベノミクス」により、大規模な金融緩和が行われた結果、名目賃金が上昇し、雇用も回復した。そのため、経済回復ムードが醸成された。ただ、経済成長の成果が庶民に十分に行き渡らなかった。国民経済の多数を占める中小企業に効果が波及しなかったという面はあるが、景気が回復し、今後の先行きが明るいという「アナウンスメント効果」を発したという面があった。中国政府が行っている一連の刺激策もこうした効果を狙っているのではないかと考えられる。

    今年の中央経済工作会議は、景気回復に向けて緩和気味の金融政策を行い、カネを実体経済に流れるようにすることで、人々に経済回復の実感を持たせ、消費環境を改善することが大きな狙いの一つではないかと筆者は考える。

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  • 「都市変革の新構想:日仏の視点から」と題したグローバル地域研究セミナーが開催されました。

     お知らせ

     11月29日(金)の午後に、地域経済研究所1階の企業交流室にて、「都市変革の新構想:日仏の視点から」と題した「グローバル地域研究セミナー」が、オンライン併用で開催されました。第1講では、環境を重視したフランスの新しい土地政策・「人口化ゼロ政策」について、日仏会館のラファエル氏にご紹介いただきました。第2講では、新潟大学フェローの寺尾 仁先生から新潟市における中心商店街再生についてお話しいただきました。その後、当研究所の佐々井司教授をコーディネーターに、日本とフランスの人口や都市の比較、福井市における中心市街地活性化などについて議論がなされました。

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  • 民主主義を考える 終わりなき旅路

     民主主義とは何か? 民主主義の在り方が根本から問われる時代を私たちは生きている。今回は、民主主義という言葉を聞くといつも脳裏に浮かぶスイスの小さなまちでの思い出話をお届けできればと思う。

     スイス東部に位置するアッペンツェル。直接民主主義が息づくまちだ。毎年4月に3千人ほどの住民が広場に一堂に会し「青空住民議会」が開催される。議会のはじめには行政から昨年度の会計報告があり、その後、様々な議題に関して、住民が右手をあげるかどうかでまちの政策が直に決まっていく。住民が代表となる議員を選出し、その議員が議会で決定行為を行う間接民主主義とは異なるスタイルだ。参加と責任はセットであり、住民の右手には責任が直接かかってくる。青空住民議会はその最高意思決定機関だった。

     青空住民議会という直接民主制の仕組みにも当然ながら長所と短所がつきまとう。しかしながら、地域の人々が集まり、意見を述べ合い決定していく姿には、民主主義への人々の社会的意志を示すのに十分な力で溢れていた。自分たちのまちのことは自分たちで決めていく。分権社会であるスイスの自治の精神を凝縮したかのような一場面に圧倒された。

     さて、少しの間このまちに滞在することを決めたのだが、困ったことがある。端的にいうと物価が高いのだ。レストランで食べていては旅を継続することはできない。こういうときは、パンとチーズでも買って、屋外の雰囲気がよいベンチに座って食べる。それが自分流の対処法だった。特に、スイスの景色はどこを見ても息をのむ美しさであり『アルプスの少女ハイジ』の世界。至る所に素敵なベンチがあり、選択肢はあまたあった。その中でもすごく惹かれた机つきの一つのベンチがあった。空も暗くなりはじめたころ、そこで一人、パンをかじりはじめた。

     するとなぜかそのベンチに人があつまりはじめた。アフリカのソマリアから来たという彼、アフリカのエリトリアから来たという彼、はたまたチベットから来たという彼。私は当然ながら驚いたが、彼らも驚いたことだろう。なぜここに見知らぬ東洋人が座っているのだと。そのベンチは、母国を離れ難民としてスイスに移り住んで来た彼らが、夜な夜な集う“アジト”と名づけた大切な居場所だった。気があい、話が盛り上がった。ビールを2本ももらった。なんとも愉しい晩餐となった。

     ただ、自分に刻まれたことがあった。あなたはなんでこのまちに来たんだと聞かれて、「青空住民議会」を見たくて来たんだ、と答えた。しかし、彼らは、その存在自体を知らなかった。あれほど人が集まり、政治的決定を行う象徴的なイベント。それだけでなく、青空住民議会の後には、人々の交流がまちに溢れ、レストランでは地ビールを飲む姿が夜遅くまで見られる特別な日、なのにだ。間違いなく青空住民議会の存在は民主主義における世界の良き事例の一つであると思う。それでも、彼らとの接点がまったくないという事実に、頭を殴られた気分だった。

     その日以降も、まちを紹介してくれたり、彼らと時間をともにした。まちを離れる前には、チベットからきた彼の住まいに招かれ、チベットの蒸し餃子であるモモをふるまってくれた。そして、彼の夢や希望に聴き入った。

     話を戻そう、民主主義とは何か? 答えは簡単には出そうにない。しかし、政治体制の在り方だけを意味する言葉ではないことは確かだ。その概念の範疇は、山よりも高く海よりも深い。一人ひとりが持つ尊厳と可能性の価値を認め合うことに立脚する営みであり、そして、それは終わりなき旅路であること。私はそう教わった気がする。

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  • ■中島精也先生による時事経済情報No.111

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  • ふくい地域経済研究第39号

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  • 第5回地域経済研究フォーラム「高速交通による大交流時代と福井・中部の課題」

    12月19日(木)13時30分~17時00分に、福井駅西口ハピリンホールにて、「高速交通による大交流時代と福井・中部の課題」と題した地域経済研究フォーラムを開催いたします(中部圏社会経済研究所との共催)。北陸新幹線開業後の福井の成果と課題や、新幹線などの高速交通体系整備下での福井および中部地域の地域経済について、考える機会になればと思っております。多くの方の参加をお待ちいたしております。
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