メールマガジン
北陸工作機械メーカーの国際化の課題
日本における北陸の工作機械メーカーの存在感は大きい。全国の工作機械出荷額に占める北陸のシェアは1割強で、全国製造品出荷額に占める北陸のシェア2.7%と比べて4倍近いシェアを誇る。その工作機械産業は、長い間、構造不況業種といわれ、受注の多くを海外需要に求めてきた。日本工作機械工業会の調べでは、全受注額に占める外需(輸出)比率は、1990年26%から年々上昇し、2012年には69%に達している。今後を展望しても、国内需要の拡大は見込めないほか、日本企業の海外生産シフトや為替リスクの回避などで、工作機械業界の国際化はいっそう進展する方向にある。
しかし、日本の工作機械メーカーを取り巻く国際環境をみると、韓国、台湾、それに中国が着々と力を付けてきており、海外市場での競争は年々厳しさを増している。工作機械は部品のすり合わせが重要で、かつ主軸など高度な技術を要するコア部品を内製化する必要性から、部品を外部から調達して組み立てるだけのアジア勢に市場を奪われることはないと静観しているわけにはいられない。事実、アジア市場では低価格を武器に攻勢をかけるアジア勢の台頭で、工作機械の低価格化が急速に進み、日本企業のシェアは後退している。
特に中国では、経済成長と産業発展によって工作機械の需要は急激に拡大し、中国工作機械メーカーの生産額は飛躍的に上昇、2009年には生産額で日本を追い越し、世界最大の生産国となった。今後、中国の国内市場が飽和状態に近づけば、家電製品のようにアジアなど低・中価格帯市場へ輸出を伸ばしてくることは間違いない。
こうした動きに、北陸工作機械メーカーも黙ってみているだけではない。松浦機械製作所は、アジア市場を米欧と並んで重要市場と位置付け、「低価格の立形MCを用意しなければ高級機種に移行する顧客まで失う」との危機感から、台湾から調達したOEM機に自社製の高品質な主軸などを搭載し、従来機種に比べ価格を3から4割抑えた新機種の販売に踏み切った。高松機械工業も、中国杭州市に設立した子会社がこれまで中国で製造、販売していた低価格機種を今後東南アジアまで販路を広げるために中国での生産体制を強化したほか、本社では日本初のグローバルエントリーモデルを開発、製造し、今年4月から販売する。
日本の工作機械メーカーは、追随するアジア勢に対して、高精度、高効率、高速度、小型化による高付加価値化あるいは生産工程の自動化・省力化による差別化ですみ分けを図るのも大事であるが、ボリュームゾーンである低・中価格帯市場への参入も必要である。工作機械は、すり合わせの技術が重要であるため、モジュール化は馴染まないと考えている人は多い。しかし、中国の自動車業界では、日系メーカーまでが、自動車をいくつかの複合部品に分けた生産体制を構築(モジュール化)し、部品の共有化を推進する動きが始まっている。日本の工作機械業界においても、国際競争力の強化あるいは高収益体質への転換に向けて、モジュール化と部品の共有化に取り組むことが求められているといえよう。
協働のまちづくり
協働型のまちづくりを推進するに当たって、行政側の関与のあり方や姿勢が問われることが多い。一方で、住民側にも一定の組織化や意識改革が必要である。本コラムでは、住民に求められることを中心に、協働のまちづくりに向けた課題について考えてみたい。
地域代表としてのまちづくり協議会
まちづくりの推進団体としてはまちづくり協議会が代表的である。まちづくり協議会を中心とした協働のまちづくりが成功しているところでは、いずれも十分な時間をかけてその組織を熟成させている。
まず、まちづくり協議会について行政が、条例等で自治会や各種団体との関わりを明確に位置づけている。その上で、まちづくり協議会がまちづくりに関わる各種団体等を束ね、様々な経験を共有し積み重ねることによって、地域住民からの信頼を得ていき、そして、まちづくりに関して地域を代表する団体として住民から認知されるのである。
行政のバックアップのもと、粘り強く継続した取組こそが、協働のまちづくりに向けた唯一の近道である。
当事者意識を持つ
まちづくりは、行政からの押しつけや住民からの一方的な要望では成り立たない。また、行政は公平・平等が原則であり、個性的なまちづくりが求められるなか、オーダーメイド型の対応には不向きである。そこで、地域の課題を地域に任せるという発想が生まれてくる。まちづくりに向けた試行錯誤の過程で、課題や改善点が明確になり、行政との連携もとれるようになる。まちづくりは「トライ&エラー」ができる分野である。
地域の課題には、まずは日頃からその地域に関わり考えを持っている住民が対応する。利害関係を調整し、公共性にも留意しつつ、まちづくり協議会等の組織が中心となって、合意形成を図る。ハード面など住民だけでは解決できない部分や、市一律で取り組んだ方が効果が高い分野を行政がカバーする。お互いの役割を理解した上で助け合う、協働型のまちづくりに意識を変えていく必要があり、住民はなにより、まちづくりの当事者としての自覚が求められる。
小さなことの積み重ねから
まちづくりという言葉は、誰でも簡単に使える言葉である。しかしながら、範囲の捉え方は様々であり、「私には関係ない」とか「地域活性化のような大それたことはできない」などと捉えられがちである。しかしながら、まちづくりは本来、身近なものであり、難しく考える必要はない。花の手入れや見守り活動など、「地域のためになる、地域の人に喜ばれる小さいことの積み重ね」が住みよいまちを作る第一歩である。日頃の楽しい活動の延長が、自然とまちづくりにつながっていくのである。
注)本コラムは、坂井市「広報さかい(平成25年12月号)」に掲載されたインタビュー記事をもとに、筆者が作成したものである。