福井県立大学地域経済研究所

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「選挙と国勢調査」

福井県立大学 地域経済研究所 教授 佐々井 司

 6月上旬、厚生労働省から「令和6年(2024)の人口動態統計月報年計(概数)」の概況報告がありました。日本の出生数は70万人を切り、合計特殊出生率も前年2023年の1.20から1.15と0.05ポイント下げ、人口規模を維持するために必要な2.06を56%程度しか保てない水準にまで低下しました。“韓国などの隣国よりはまだマシ”などと言っていられるのも今のうちかもしれません。全国的に出生率は大きく低下しましたが、何故か一県だけ前年から下がらなかった県があります。それが福井県です。その結果、47都道府県のなかで出生率の相対的な高さは、本土復帰後一貫して1位の沖縄県に次ぐ2位となりました。もっと騒がれるのではないかと思いましたが、本件に関して私にコメントを求めてこられたのは読売新聞の記者の方お一人だけでした。皆さん大変冷静にこの数字をみているのだなぁ、と感じた次第です。出生率が下がらなかった福井県ですが、出生数は減少しています。ということは、率算出に際し分母として用いる女性人口の減り方が影響したことになります。分母の女性人口は年次の末尾が0と5の年に実施される国勢調査の結果をベースに推計された5歳階級別人口で、都道府県については四捨五入して1,000人単位のものが使われています。そのため、人口が少ない地域ほど小数点第2位のぶれ幅が大きく、厚労省が毎年この時期に公表している地域別の出生率は かなり“ザックリとした”値だと割り切ってみるのが“正しい”解釈の仕方だと思っています。うちの地域は上がった下がったと一喜一憂するより、最も高い沖縄県でも1.60、2位の福井県でも1.46まで低下してしまった本当の原因は何なのか、目を逸らすことなく考え続けることのほうが大切だと思います。

 人口動態率の数値を左右する国勢調査ですが、なんと今年が5年に一回の実施年です。調査結果は国と地方の行政にも少なからず影響を及ぼします。主なものは、地方交付税交付金と国政選挙の議員定数でしょうか。過去には結果を水増ししたとして逮捕された首長もいます。また、議員1人当たり人口における最大較差、いわゆる一票の格差が問題になるなか、2016年以降、参議院の選挙区選挙において、島根県と鳥取県、徳島県と高知県がそれぞれ「合区」となりましたが、その根拠として用いられてきたのも国勢調査の結果です。従来は4県で合計8の議席を有していましたが、各合区の定数が2となったため、現在では4県合計の議席数は4となっています。合区の設置によって一票の格差は一時的に縮まったものの、その後の国勢調査の結果を用いた計算によると、格差は再拡大しています。議員1人当たりの人口が多いのは宮城県、埼玉県、東京都などで、逆に最も少ないのは合区後一貫して福井県となっています。福井は有権者一人ひとりの投票の重みが最も大きな地域とも換言できるでしょう。夏至の次の日の6月22日には東京都議会選挙がありました。変化の兆しを多少感じさせられる結果ではありましたが、投票率が相変わらず50%を下回っていることからすると、都民の本気度もまだまだかと。人口動態と各種の議員選挙は地域社会の写し鏡です。7月の参議院選挙には県民の一人として真摯に向き合ってみたいと思います。